第18話 林間学校最終日

 林間学校最終日の三日目。

 身支度を済ませ、食堂に向かう。

 既に朝食は、準備されているようでカウンターにところ狭しと置かれていた。

 朝食を貰うと先に席についていた彼女達の元に向かって行く。

「おはよう」

「おはよう、畝間君」

「おはよ~、畝間!」

 そう言うと杉並が、

「昨日流星群が凄かったんだってね。私も見たかったな~。昨日はお風呂入って眠たくなったから寝ちゃってさ~」

 と昨日のことを話す。

「俺と峠崎は一緒に流星群見たぞ。何か幻想的で凄かった」

「ええ、そうね。凄かったわね」

「えー、二人ともズルい~。私も見たかった~!」

「まぁ、また来年があるじゃない。畝間君も来たことだし、朝食を食べましょう」

 そう言って三人揃って、いただきます、と言う。

 朝食のメニューは、ご飯、鮭の西京焼き、味噌汁、ほうれん草のおひたし、漬け物、味付け海苔だった。

 味噌汁は相変わらず丁度の濃さで、体を温めてくれる。

 鮭の西京焼きもほどよい味付けで、ご飯との相性も抜群だ。ほうれん草のおひたしも美味しい。

 今日は二杯目のおかわりで食事を終える。

「今日はあまり食べないのね」

 不思議そうに彼女が尋ねる。

「ああ、今日はなんとなくこれくらいでいいかなと思ってさ」

「そうなのね。意外で驚いたわ」

「そうだね。畝間があまり食べないのは何か不思議~」

「まぁ、そういう日もあるさ。そういや、今日は何をやるんだ?」

 今日の予定が気になり、質問をする。

「今日は、特に予定はないみたいよ。お昼ご飯を食べて終わりみたい。何だか味気無いわね」

「そうだな。何かイベントがあってもいいと思うんだが。まぁ、いいか」

「確かにそうだね~。何か味気無いよ~」

 彼女は嘆息する。

「じゃあ、片付けに行こうぜ」

 そうすると三人とも立ち上がり、カウンターまでトレーを持っていく。

 朝食後は、予定も無いらしいので実質、自由時間だ。

 部屋まで戻ると持ってきていた「ソードアート・オ○ライン」を読む。

 時折、隣から聞こえてくる彼女達の話し声をBGMに読み進める。

 気がつけば二時間ほど経過しており、九時半になっていた。

 暇なので彼女達の部屋に行くことにした。

 コンコン、と二回ノックする。「はーい。どうぞ~」と返事が返ってくる。

「暇だからトランプとかオセロとかしようぜ」

「うん、いいよ~」

「ええ、いいわよ」

 そう言って前回と同じく、大富豪やババ抜き、ポーカーをする。

 やはり、杉並が強く大富豪では、大富豪になり、ババ抜きでは一抜け、ポーカーでは、フルハウスやロイヤルストレートフラッシュを出す。

 いやいや、可笑しいだろ。ロイヤルストレートフラッシュなんて某アニメで言われてる通り、六十五万分の一の確率だ。そうそう出るもんじゃない。イカサマしてるんじゃないかと思うほどだ。兎に角、杉並は引きが強かった。

 結果は、杉並が十二勝、峠崎が二勝、俺が三勝だった。

 トランプで遊んでるとあっという間に、昼食の時間になる。

「そろそろ時間だな。昼食に行こうぜ」

「そうね。行きましょう」

「そうだね。行こう!」

 そう言うと立ち上がり、食堂まで向かう。

 カウンターには、既に昼食が準備されていた。

 昼食を取り、近くのテーブルに杉並、峠崎、俺と座る。

 三人揃って、いただきます、と言い食べ始める。

 昼食のメニューは、ご飯、中華スープ、油淋鶏、青椒肉絲だった。

 やはり、暑い時に熱いものもいい。

 中華スープが全身に染み渡る。

 油淋鶏は、味付けも良くご飯との相性が最高だった。青椒肉絲もしっかりと火が通っており、非常に美味しい。結局、今日のお昼は三杯おかわりした。ここで食べるご飯も最後だと思うと、名残惜しい。

 名残惜しさは、ありつつも最後に残ったご飯と青椒肉絲を食べる。

 十五分ほどで全部を食べ終える。

 そうすると、北川先生が、

「はーい。食べ終えた人は、部屋の片付けをして、荷物の準備をして下さい。その後、玄関前に列になって集合して下さいね。以上です」

 そう言って北川先生は、玄関の方まで歩いて行く。

「じゃあ、部屋の片付けしてくるか。行こうぜ」

 三人とも各自の部屋に戻って、片付けや荷物の準備をする。

 この部屋で過ごすのも最後かと、センチメンタルな気分になる。

 手早く散らかったものを片付け、荷物を終えると、大きめのサイズの鞄を肩に掛けて玄関に向かう。

 玄関前に着くと、峠崎も杉並も来ていたようだ。

 小学生もどうやら全員集まっているみたいだ。

 すると、長谷川先生がみんなの前に来る。

「みんな集まったようだな。これで林間学校は終わりだ。終わる前にボランティアスタッフでお世話をしてくれた三人にお礼を言おうか。代表の生徒、出てきたまえ」

 そう言うと、小学生の列の中から綺麗にツインテールに纏めた少女が出てくる。霧島さくらだ。

「三日間お疲れ様でした。畝間さんや峠崎さん、杉並さんのおかげで楽しい思い出が出来ました。ほんとにありがとうございました」

 そして、小学生全員で「ありがとうございました」と言う。

「はーい。以上で林間学校は、終わりです。みんなバスに乗り込みましょう」

 そうすると、皆バスがある駐車場の方まで向かう。

 すると、こちらの方に少女と少年二人が走ってくる。

 霧島さくらと、健太、光だ。


「「「畝間さん!」」」


「おお、お前達か。今日でお別れだな。何かちょっと寂しい気分だな」

「はい。野外炊飯楽しかったです!いつかまた会う機会があったらよろしくお願いします!」

「畝間さん、じゃあな!」

「畝間さん、ありがとうございました」

 そう言って三人ともぺこりと頭を下げる。それから、列の方まで戻って行くのを見送る。そうやってわざわざ俺のところまで来てくれるとは、律儀なやつらだ。おっと、目から汗が。

 その後は、小学生が居なくなるまで手を振る。

 小学生と北川先生が見えなくなると、長谷川先生が、

「じゃあ、私達も車の方まで行こう」

 と呼びかける。

 そうして、先生の黒の乗用車の方まで向かう。

 車に乗ると三人とも揃って、「はぁー」とため息をつく。

「終わっちゃったね。あっという間の林間学校だったよ」

「そうね。三日間あっという間だったわね。もう少し過ごしたかったわ。でも、楽しかったわね」

 口々に感想を言う。

「そうだな。野外炊飯とかオリエンテーションやウォークラリーも楽しかったな。また、機会があればやりたいな」

「三人ともお疲れ様。では、家まで送っていくぞ」

 そう言うと、エンジンをかけ車を発進させる。

 その間特にすることもないので、三人とも眠る。

 来たときの道を辿り、走って行く車。片道二時間の時間をかけて、走って行く。

 青春を生きる三人を乗せ、等速で車は進む。

 斯くして林間学校最終日が終了する。

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