君、想ふ

遥姫

序章


 時は人と鬼が対立する時代――。


 鬼は人を襲い、人はそれに応戦する。そんな戦争が続いていた。だが、それも軍の発足により沈静化。


 人々は徐々に平和な生活を取り戻し始めていた――。



 *****



「ここ、どこ……?」


 少女は道に迷っていた。

 母と一緒に出掛けた矢先、蝶々に釣られていつの間にか山の中に迷い込んでしまったのだ。

 徐々に道も無くなり、先に見えるのは獣道。薄暗くなってきた辺りを見回しながら怯えていると、背後から声が聞こえてきた。


「……だれ?」


 ビクッと肩を震わせてから勢いよく振り返ると、そこには一人の少年が立っていた。髪は伸ばしっぱなしで腰まであり、目には感情が宿っていない様に思える。少女は警戒しながら一歩後ずさり、震える声で話しかけた。


「だれ……?」

「ぼくがきいたんだけど」


 二人の間に変な沈黙が生まれる。


「あ、えっと……か、かおるこ……」


 少女が慌てて答えると、少年は――。





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