第2話 弟子にしてください


 

 下水道掃除屋とは名前の通り下水道の清掃を主に仕事としているものだ。ここ水の都マハシュトラは首都である第一都市アムラバから大河が流れ、最下流となるここに流れてくる。ここ第六都市プネーに流れてくる水は上流の人間たちが汚した水だ。その不衛生な水をろ過し再利用している。その再利用した水が流れ着いたのがこのプネー下水道だ。他の都市にある下水道でも一番汚いといわれるここを掃除屋として生業としているのがこの俺、ライセンだ。

 そんな俺がいつものように仕事を斡旋してもらうためにギルドに行くといつも話す受付嬢がいた。その隣に見知らぬ少女が立っていた。少女は俺の顔を見ると近づいてきて

 「あ、あの下水道掃除屋のライセンさんですね」

 「ああ、そうだ」

 「私を弟子にしてください!!」

 「は?」

 少女の言葉に俺は思考がフリーズする。

 少女、見た目の年齢は14、15あたりか。

 身長178cmの俺を上目使いで見上げる彼女は、女性の平均身長からみるとやや小柄だろう、髪は薄いピンク色をしており左右で三つ編みに束ねている。

 そして特に目を引くのが服の上からでも分かる丸い大きな胸だ。

 「ワティさんに急にそんな事を言ってもライセンさんが困惑するだけですよ」

 そう言って会話に入ってきたのはお世話になっている受付嬢のスイーホだ。黒髪のロングヘアーの女性でかもし出す大人の女性の雰囲気も伴ってギルドの男性たちには人気だ。

 「スイーホさんこの人は」

 「そうですね、少し説明が長くなるので応接室に行きましょう。

 こうして俺達は場所を替えて話すことになった。

 

   ※


 「ご存知とは思いますが近年地下水の汚れが酷くなってきています。それにともない下水道掃除屋の仕事の量も増えています。ライセンさんに色々と負担していただいてギルドとしてもありがたいのですが、やはり一人で出来る仕事の量には限界があります。そこで下水道掃除屋を専門の職種としてギルドで募集する事にしました。そうして選ばれたのが彼女です」

 前置きなくスイーホさんはそう話し始めた。確かに俺が下水道掃除屋を始めてから数年が経つが仕事の量は増える事はあっても減りはしない。それは上流部の人口増加が原因だろう。それゆえに人員増加は理解できる、しかし。

 「どうして彼女なんだ。こういう仕事は女性よりも男性の方が向いているんじゃないのか?」

 男女差別と言うわけではないが、下水道掃除屋の仕事は汚れ仕事だ。臭いも体につくし彼女のような可愛らしいピンク色の髪から汚物の臭いが染み付いてしまうとなると男として心苦しい気がする。

 「ライセンさんの指摘はごもっともです。ですがそれも加味してギルドでは彼女が「最適」と判断しました。色々と不備はあると思いますが将来の事も考えて引き受けてもらえないでしょうか。もちろん報酬は出しますし福利厚生も手厚くいたします」

 彼女を一人前に育てる代わりにギルドから後ろ盾になってもらえる。悪い話ではないが彼女が最適と言うのが疑問だった。しかしここで問答をしていても始まらない。

 「分かりました、一つ条件を出しますのでそれを呑んでいただければ考えます」

 「条件ですか」

 「論より証拠。実践です」

 その言葉に彼女が反応する。

 「それってつまり」

 「一度だけ俺と一緒に下水道掃除屋の仕事をしてもらう。それで今後どうするかを決めたい」

 スイーホさんは視線を俺から彼女に移す。

 「よろしくお願いしますっ!!」

 彼女は二言返事で承諾した。

 「では明日朝5時に下水道の1番入り口の前で待ち合わせだ。詳しい場所は彼女に聞いてくれ」

 そう言って俺はスイーホさんを見ると、彼女は任せてくださいと言うサインを送る。

 「はい、よろしくお願いします」

 「そういえば簡単な自己紹介がまだだったな。下水掃除屋のライセン、職業は戦士で武器は剣だ。術は初歩的な攻撃魔術と浄化魔術が使える」

 「あ、ワティと言います。僧侶です」

 「得意な術はあるか?」

 「浄化魔術なら一通り。攻撃魔術は覚えていません」

 「なるほど掃除屋向きだな」

 そうして一通りお互いの情報を交換したあとで解散となった。

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