ハロウィン
再会の日程は木曜日しかなかった。
これは,私が唯一一人きりになれる時間だったから。
平日で家族が不在。なおかつ、私の仕事のない日。
先生は在宅ワークが多く時間は割とフリーに作れるらしい。
私は東京都の北西部,西武新宿線沿いに住んでいる。
吉祥寺には割と近い。
まあ、出会いが地元だったので、お互い家庭持ちで、立地的に奇遇ってこともないが。
場所は、新宿プリンスホテルのアフタヌーンティーにした。
ハロウィンのスウィーツイベントを予約してくれた。
その日が来た
30年前の下北沢でのことを思いだす。
あの時も新宿駅にいったな。今回は、少し外れの場所だけど。
アフタヌーンティー、実は好きではない。
私は大のコーヒー好きで、SNS映えのする飾り立てたスウィーツも好きではない。
この選択肢だと,私を女の子と勘違いしていると思った。
私は女の子ではない。おばさんだ。しかも、かなりガサツな女。
さあ、何を着て行こう?
相手は50代の社会的成功者。私に淡い乙女心を求めている。
若作りでイタイかんじがなく、清楚でこなれた大人。
局アナ系か。
おしゃれはとても好きなので、ワクワクした。
手持ちのものを見て,足りないアイテムを探す。
…特に,足りないものもなかった。
キャラメル色のロウリュウ生地のブラウスに
ジャガードの膝丈スカート。
胸元は開きすぎず,鎖骨が見える程度。
髪はショートのゆる巻で。
カルティエの時計、最後にトッカのパフュームを足首に。
完璧。
リリーブラウンのロングトレンチを羽織り、トラックブーツを履く。
近所では、目立つ格好である。
自分がいかに郊外の主婦であるかを実感してしまう。
新宿まで30分。
西武線の切符売り場に着く。人はあまりいないので、すぐに見つけられるだろう。まだ、先生の姿はない。
胸が高鳴る…緊張で口が渇く。
(なんてあいさつするか)どうしよう。
改札から逆の方向から懐かしい匂いが来た。
先生がきた。
驚くほど変わっていなかった。
オシャレで早歩き、愛想のない顔
「こんにちは、先生,変わってなーい!」
「そんな手振らないでもわかるから」
なんともない,本当になんともない感じで自然だ。
「せんせー、せんせー、」
心の中で、14才のわたしが、大きく手を振っていた。
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