天寿を全うした祖父の事を思い浮かべながら読ませていただきました。
入院から最期までがあっという間で、見舞いに行くこともできなかったのが今も悔やまれます。
そんな、「命が旅立つ場所」である病院ですが、同時にそこは「命が生れ落ちる場所」でもあります。
なんの運命の巡り合わせか、ある人の悲しみの時と、また別の人の喜びの時とが、このように交差することもあるのだなぁ、と、しみじみ感じ入りました。
ひょっとしたら、全く縁なく終わったかもしれないその両者の人生ですが、この非常に僅かな出会いに、何か運命めいたものを感じたくなります。
実際、この出会いのおかげで失意の底にいた主人公は、少しだけ前向きになれたかのようですし。
病院という場での数奇な運命の巡り合わせが見事な作品でした。