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好きなアーティストという枠ではなく、好きなアルバムという単位で不定期に語っていきたい。
このスタンスなら更新頻度が上がられるかもしれない。音楽好きな僕はそう思った。
どのアルバムを紹介したいか、語りたいか、と考えたときに一番最初に思いついたアルバムがある。スマッシュヒットした曲があるわけでも、歴史的名盤というわけでもない。きっと過ぎていく時代の中で埋もれている類のアルバムだろう。
最初に紹介したいのは、Sunny Day Real Estateというアメリカ出身のバンドのアルバム「The Rising Tide」だ。2000年に発売されたアルバムで、初期エモロック(インディーロック)の代表格と呼べるべき大事なバンドの4枚目の作品。そして、後に解散してしまったので実質ラストアルバムでもある。
このバンド、Sunny Day Real Estateが追求してきた音楽性を深化させ続けた結果、辿り着いてしまった極地、最終的な完成形ともいえる音楽が詰まっているのだ。きっとこれ以上は、もう無い。そう思えるほどの恐ろしい完成度である。
「The Rising Tide」
これはジャケットのデザインが全てを物語っている。
水色というか、褪せた青色だけの風景に女神のような天使のような存在が脱力した男性を抱きかかえるという様子の雨に濡れた石像が写真としてデザインされている、そんなジャケット。これがこの作品の全てだ。
11曲収録されているアルバム全てに雨が降っている。神聖で美しく、陰鬱な昼間の雨が降り注いでいる。
実際にSEとして雨音が入ってるわけではないけれど、メロディーが、ギターのリフが、ベースのうねりが、ドラムの響きが──全てを青色に染めるために鳴らされているような感覚になってくるのである。
元々、このバンドは切なさとか弱さとか影のあるメロディのロックが得意技で世間的には1stが一番評価されている。けれど、それはエモというジャンルの始まりにあたる作品だから、音楽史の流れで評価されているだけであってバンドとして評価するなら間違いなく今作「The Rising Tide」になるだろう。
ロックのサウンドとしては、ほぼ全てがミディアムあるいはバラードみたいなゆったりした曲が並んでいる。なので、刺激的だったり、興奮できるものではない。雨という世界観に浸るためのアルバムだ。ゆえに11曲全てでアルバムを形成している。
捨て曲という概念はこのアルバムにはない。
全てがジャケットに描かれる青色に染まっていく……僕はこの世界観に魅了され続けている。
おわり
白昼夢とFIGの日記 不可逆性FIG @FigmentR
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