11.28|ひさしぶりに
ぼんやり書籍に触れた。
山怪 山人が語る不思議な話
https://amzn.asia/d/7vet64V
遠野物語のように、山里に住む方々を取材し、語ってくれた小話を集めたもの。ここで紹介される筆者のいう通り、「話」になる以前、「出来事」の状態のものばかりになる。なので読み物として面白いかというと、正直わからない。ただ面白くなるとそれは「物語」であり、「山人が語る不思議な話」なのかというとまた違うなにかに成り果てるのかもしれない。冒頭にて語られる筆者の指針からしても、集めたいものは「物語性を有した、語られつづけた挙げ句運びがスムーズになったなにか」ではないのがわかる。
問題は、著書の中でも語られているのと同じで、いやすこし違うかもしれないが「面白くなる前の語り、エピソードトークは、あくまでリアルな噂話程度のものでしかなく、それが発せられた時点で、あくまでもそこで終わってゆく状態にあるはずだったのではないか」ということ。消えゆくことが是のものを、留めるとはどういうことか。という悩ましさ。けれどこれは、だからこそ留めておく必要があるのだ、本にすることに意味があるのだ、ともなりうるのだと思う。カフカ氏の創作物があって、それを氏から「自分が死んだらすべて焼いてくれ」と言われた友人が、彼の意思を反故にし、作品として世に出す。なぜそうしたのかと問われれば「残すべきだと思ったから」となるようなもの。それとすこし近いのかもしれない。
話が話として残るか残らないかは、語り側がどうこうする、ももちろんあろうが、「興味深い」「おもしろい」「魅力がある」ないしは「潜り込みがいがある」「いじりがいがある」「取材のしがいがある」というように、聞き手側がある程度身勝手を発生させないといけない気はする。ものを編集することによって、読みものにする、という行為の大事さと、罪深さなのかもしれない。そしてそれを現在はだれもができうる状態にあるのが、自由であり、氾濫的であり、良くも悪くもよっぽどでないと残りにくく、むしろあまりにもそういうものがありすぎ、消えやすくなっている可能性すらあるのかもしれない。留まって興味を消費するのに向かないのが現在、どちらかといえばだれもが編纂者、という気はする。5分すら長く、1分すら長く、編集が果てまでゆくとどうなるか、の中にあるので(おそらくは)
ここに抵抗するぞと、地球上に存在する壁画のように、自分のものを刻み込むような行為ができるのかというと、場合によっては可能かもしれないが、わからない。かつまた、そう目指したところでならないのがこういうものの常で。生きているうちにはそうならないことが多いのがこれのような気はする(後世にてそれを発見したもの、読んだものがそれに興味を持ち、意味や意図を紐解こうとするからこそ、になるため)。発露の時点で「物語」なのか「語り」なのか「語られるべきもの」なのかというと、そうではないような気がする。尾ひれをつけるのは常にそれを観測するものであり視点で、実際にそれがどうだったか、すばらしいものか、粗悪なものかは、正直関係がないのかもしれない。価値をどう見出すか、常にこれ次第と思う。
これを刺激すると、一考察、という導線が多岐にわたる結果となり、「お話」を自分の中に有せるようになる。だから出題めいた格好をもつ、いち作品として眺めると未完成な風にも取れる作品が盛り上がりやすいのかもしれない。隙があるものを目撃させると、勝手に観測側が思考を巡らせ、それを引用しつつ回答をして埋めるため(SNS的な動作として)
しかしこの、「出題→回答(正解かどうかは別として、受け手側がこうなのでは、と発露する自由を有せるもの)」の形式を内包する作品形態も、ここ数年の、いろいろの作品群が出た結果として一周した気配がある。一周とはつまり「またこれか」というような飽きられの気配である。弱点があるとすれば単純に「疲れる(見出し続けなければならないため)」があるかもしれない。来年くらいには別のところにブームが移っている気がするが、ぼくの勘違いの気配が強い。
一考察をする、の先にある「お話」「語り」の形態がなんなのかも正直想像がつかない。あるとすれば、というかこの一考察、という動作自体が、キャラクター主体という気はする。物語への忌避、自身で物語を見出すことへの忌避、が発生したとして次に起こるのは、そもそも自分を物語ればいい(一考察させる側に回ればいい)という私小説の向きだろうか(自己のキャラクター化。現実との乖離)、なぞ考えたが、それはもうすでに溢れているし、存在しなかったときがないし、それがそもそもSNSなので何周したかわからない。わたしの感覚は常に遅れている。
不確定日記 宮古遠 @miyako_oti
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