第23話


 放課後。

 孝司と悠樹と別れた健斗たちは、学校を出て家へと向かっていた。


「なあ、健斗」

 心の声が漏れた様な呆けた声が聞こえる。


「……どうしたの?」

 京介でも呆けた声が出るのか。純粋に驚いた。


「昼間に孝司が言っていた事件なんだが」


「あー、学校の生徒が襲われたって言う事件?」

 噂のはずだ。現に健斗は被害者が誰なのかを知らない。


「ああ。その事件だよ」


「その事件がどうしたの?」

 不思議そうな顔で健斗は返す。

 しかし、健斗にはその意図がわかった気がした。


「俺たちで調査しないか?」


「調査――?」

 だろうな――。今の京介なら、そうしそうな気がしていた。


「そうだ。捕まえる――まあ、それが理想だが、少なくとも現状を調べる必要がある」


「ああ。なるほど」

 感心した様に健斗は頷いた。

 にしても、噂を信じたのか。それとも、何か別の確信があるのか。

 京介がここまで言うからには、この事件は現実なのだろう。


「そうと決まれば、行くか」

 健斗の返事に、京介は覇気のある声を出す。


「青春の道に?」


「ああ。にしても、一つ気になるな」


「一つ?」


「あそこには防犯カメラが多数設置されている。その中で、犯行の一部始終や犯人らしき人物の姿が確認されないのは――不自然だ」


「不自然――。カメラから逃げているとかなんじゃない?」


「可能性はある。でも、犯人の姿を確認できないのは、なぜなのか」


「なぜなのか――?」

 さて、なぜなのか。二人揃って、腕を組みながら歩いていた。


「つまり、誰もが『犯人』を特定出来ていないということだよ」

 どこか困った顔している。京介は信号の前で大きくため息をついた。


「――ほお」

 健斗も信号の前で立ち止まり、感心した声を出す。


 ここからあと数分、そこに青春の道がある。


 美咲たちとよく行っているはずなのに。

 今日は不思議と胸騒ぎがした。

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