第28話 海に行きたい
夏の日差しに照らされながら、海辺を歩く。海の潮風が吹き抜け、涼しさを感じながら、俺
一人は高校からの俺の後輩である佐藤由美。佐藤は担当が数学だからか打算的というか小悪魔的というかそういう可愛さがある。そして一人は俺の幼馴染的存在である小野寺知佳。知佳はいつも穏やかで落ち行く雰囲気がある。カウンセラーとしてもそれが発揮されていてとてもいい仕事をしている。ここまでは別にいい。
意外なのは小林麻衣だ。彼女もなぜか来ている。小林はうちの職場でのカリスマ英語教師だ。俺と同期にも関わらずこういった扱いをされるのは圧倒的にわかりやすい授業をするからだ。留学の経験もそうだろうが、俺とは比べ物にもならないくらい頭がいい。俺とは趣味があったりするからよく話す間柄だ。まぁそれが今回の要因に少し絡んでくる話なのだが。
どうしてこうなった経緯を簡単に説明する。小林とゲームをするようになってから、佐藤と知佳を交えてゲームをすることが増えた。それで俺のプライベートな時間は減ったわけだが。それをお構いなしで彼女らはやってくるから困った話だ。それでゲームをしているとたまたま海のステージが来た。海を連想するステージは爽やかで、きれいな青が強調されていてこの季節にぴったりだと感じた。だが、それが良くなかった。"なんか海行きたくなってきたね"と知佳が言うものだから、佐藤もその気になってしまったのだ。そうなると頼みの綱は小林しかいない。どうか流されないでくれと思っていたが"それもいいわね"とあっさり裏切られた。俺と趣味が合うものだからてっきりインドア派かと思っていたがそうではなかったようだ。
そうなってしまっては話は早かった。俺が行きたくないと言ってもすぐに却下され車を用意してと言われた。最後まで俺は抵抗を試みたが、海に行きたくてしょうがない彼女たちの耳には届かなかった。そうして、またもや俺は覚悟を決めるかのようにシートベルトをして、海に行くドライブをゲームをする仲間たちと一緒に車を出したのだった。
俺とゆかいな仲間たちが車に乗り込み、海辺を走りながら景色を楽しんでいると、突然、佐藤が叫んだ。
「先輩、あそこに海が見える!」
俺は少し無愛想な表情で、佐藤が指さす方向を見た。
「ああ、そうだな」
佐藤たちは大喜びで、窓から手を出して風を感じながら、海辺の道を進んでいく。俺も、みんなの嬉しそうな表情を見て、少しだけ笑顔を見せた。
車を停めて、俺と三人は海辺を散歩することにした。海水浴をするわけではなく、ただ海辺を歩きながら、波の音を聞いたり、景色を楽しんだりしている。
俺はあまり話さなかったが、佐藤たちは明るくおしゃべりを楽しんで、自然と会話が弾んでいく。俺も、みんなと話すことで、少しだけリラックスできたようだ。
もう一度言うが俺はインドア派であり、海に来ても室内にいるように静かに過ごしている。俺は海に来ることが嫌いではないが、海水浴やスポーツにはあまり興味がない。こんな暑いのに外に出て海に行くのは意味が分からないと思っている。ということで俺は砂浜で読書をして、静かな場所で過ごすことに決めた。佐藤たちは俺のペースに合わせて、俺がリラックスできるようにしてくれている。そういうと一見優しい連中のように見えるが、実情は俺をほっといてみんなと遊んでいるだけなのだ。
まぁそれが俺にとっても彼女らにとってもいいことなのだから全く問題がない。海辺の景色と海を楽しむ彼女らを時折眺めながら、俺は静かに本を読むことにした。
こうして落ち着く前にはいろいろあった。一番厄介だったのは恒例というか様式美というか、水着を誉めるというお約束だった。俺たちは水着に着替えて浜辺に降り立った。俺はずっと海に入らずに座っていたが、ふと佐藤と知佳が近くに来て、彼女たちの姿を見た。
「どうです、先輩?」
「どうかな、直くん?」
「どう、とは?」
「とぼけないでください。水着のことに決まってるじゃないですか?」
知佳は花柄のワンピース型水着で、ビーチに元気と明るさ見せつけていた。水着は彼女の優雅で可憐な雰囲気を引き立て、ウェーブのかかった茶髪は風になびいて軽やかに揺れていた。知佳の微笑みはまるで陽光のようで、その笑顔に合わせて花模様の水着が一層彼女の魅力を際立たせ、男性たちは思わず彼女の周りに引き寄せられていた。そして、水着の中で揺れる巨乳が、微風になびく花柄の中で官能的に響いていた。それにしても、男どもの視線が露骨すぎるぞ。
佐藤は太陽の光を浴びて淡いブルーのビキニに包まれ、その繊細な紐が美しい曲線を際立たせていた。ビキニが彼女の肌に絡みつき、しなやかな肢体が陽光に照らし出されていた。微風になびく髪は優雅に揺れ、そのたびに佐藤の笑顔はまるで海そのものの輝きを放っていた。砂浜に残る彼女の足跡は、男性たちの視線を引きつけ、由美の美しいプロポーションが心に深く刻まれた。そして、ビキニの繊細なデザインが、彼女のセクシーな魅力を一層際立たせていた。
「……そうだな、似合ってるよ……二人とも」
と俺は言った。佐藤と知佳は嬉しそうに笑って、お互いに手を取り合って跳ねた。
すると、小林もやって来た。小林は黒いビキニで、美しさと気品を存分に放っていた。そのビキニのが、完璧なボディラインを一段と引き立てていた。髪は黒く流れるように伸び、その流れるような黒髪が彼女の美貌を一層引き立てていた。彼女の目元にはクールで深い魅力が漂い、ビーチ全体に高揚感と優雅さをもたらしていた。小林の存在が、まるでビーチを彩る花のように美しい光を放っている。水着姿はまさに彼女の美しさを引き立てていた。こちらも男性の目もあるが、女性からも注目されているようだった。同性から見ても惚れ惚れするスタイルということなのだろう。彼女はクールな表情をしていたが、俺の顔をちらちらとみてくる。これは言わないと駄目な流れだな。
「あ~、小林もすごく……綺麗だと思う」
と俺は言った。小林は驚いたように俺を見たが、やがて微笑んでくれた。
俺自身、あまり感情を表に出す方ではなかったが、この瞬間は違っていた。彼女たちが水着姿で笑顔でいる姿を見て、なぜか俺も嬉しくなっていた。
「本当に綺麗だと思う、皆」
と俺は改めて言った。すると、彼女たちがさらに跳ねるように笑ってくれた。俺は見事彼女たちの求める答えに正解したようだ。その笑顔に、俺は心が温かくなったような気がした。慣れないことをするのはよくないな。俺はこういうキャラじゃない。こうした経緯を経て今に至る。
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