第18話

 礼儀という観点からは明らかに無礼な男だった。

 返答も待たずにズケズケと部屋に踏み込む彼に三人全員が不快感をもった。

 これが国の中枢を仕切る者の態度なのかと絶望を覚えるほどに。


「陛下!陛下! 是非ともご再考下さい! この者共に国の行方を任せては御身を滅ぼすことにつながりますぞ!」

「それは私たちに言ってるのか?」

「口を開くなゴミ虫がっ! 私は陛下に申し上げているのだ!」

 これ以上ないほど醜悪な顔でポーロは言った。

 君の悪いぐらい自己中心的発想。

 口を開けば罵詈雑言が飛び出す。

 彼を止める者もこの場にはいないためにさらにポーロは助長する。

「陛下! 今まで通り私にお任せ下さい! さすれば何時しか人間を再興させることをここに誓います!」

「……それはいつだ?」

「…………は?」

「貴様に任せて五十と幾年、人間は九位からも一勝すらできず、辛酸を嘗めさせ続けられている。一勝すらさせられなかった貴様にこれ以上何を期待しろと?」

 鋭い眼光がポーロを貫く。彼は脂汗を垂れ流して呼吸を荒げる。

「へ、陛下? いつもは、『お前の好きにするがよい』、と言ってくださりますのに今日はどうしたのですか……?」

 この言葉に国王はため息とともに一言。

「分からぬか、愚か者よ」

 ポーロは顔を茹で蛸の如く赤らめて彼の頭上で空間が歪む。

「ふ、ふざけるなあああっ!! 今まで散々どうでもいいと言ってきたあなたが! 何故意見を発するというのか! この青臭い小僧どもに任せると言うのか!」

「元はと言えば私の権利でありお前の権利ではない。私が何もしてこなかったのはお前に全てを任せたいと思ったからではない。時期が違かったからだ」

「がああああああっ!!」

 再び諦めため息をついて国王。

「あの証に触れられる者がまた現れてくれたことに感謝しよう。二代目よ、代表は……貴公の意向のままに」

「認めぬ!認めぬぞ!私は絶対に!」

 いつまでも喚き立てるポーロに対して国王は追い打ちをかける。

 それは本来ポーロしか知らないはずのことで。

 諸悪の根源にほど近い裏切りに等しかった。


「それはそうだろうよ。何せお前は第一位との繋がりがあるのだからな」


 そのとき、空気が凍った。

 うるさかった声が止むだけでなく、全ての音が消滅したように思われた。

 そして次点に感じたのは圧倒的な恐怖だった。

 どす黒い煮えたぎる鍋のような冷淡な眼差し。

 その発信源は────ルルだった。

 

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