第41話 君の名は

 「名」というものは、誰かから頂いたものではあるが

 いつしかその人のものになる

 ただの記号でもあり、運命づけられた短かい旋律でもある


 苗字については、頂いたものか、捻り出したもの、あるいは弾みでつけてしまったものであろう


小学校の3〜4年位の頃、それまで全てを支配していたのは「平がな」の名前だったが、徐々に漢字が侵略してきた


友達の名前は、わりと納得する漢字で成り立っていたが、友達の1人の長谷川くんが私の頭の中で問題となった

「長谷川」って何?

ハセガワ?「ながたにがわ」じゃなくて「ハセガワ」なんだ。でも何故?と思った

しかし、「ハセガワ」のほうが言い易いと無理矢理納得した


 時は下り、社会人になっても柔道をやっていたら、アメリカ人も入ってきた

そいつの名前は「マイロ」

最初名前を聞いた時、「えっ」と思った

マイロ? 何故「マイロ」?、アメリカ人なら断然「マイク」だろう。これは偏見と多大なる余計なお世話だが

何故「マイロ」? そこは「マイク」だろ


 彼はネイティブアメリカンでもなく、アボリジニでもなかった。白人のイケメン

一歩踏み込んで、何故そんなに変わった(?)名前なのかと聞いたら、答えは  "イタリア系" だった

メキシコ系だの、イタリア系と聞くと、まぁそんなこともあるのかなと思う


東欧の「なんとかビッチ」や北欧の「なんとかネン」もご当地の名前

シンプルに、どうやって区別してるんだと勝手に心配となってしまう「グエン」も特徴的だ


マイロの両親が1回だけ来日した

何しろ、親父さんはアメリカで柔道の道場やってるとのこと

熱心だった。日本人の柔道としてビデオを撮っていた


マイロの親父さんの名前を聞いてびっくりした。はっきり覚えてないんだが、「シロ」とかそんな様な名前だった。渋いイケメンのおじさんが、そんな名前とは

「シロ」?

ポチとかフネとか、アナゴさんとかに通じる

恐るべし、イタリア系

( 恐るべしは「私の英語聞き取り能力の低さ」ということもありえなくもない)


 その名を本人から聞いたとき、思わず "なんじゃそれ" というような顔をしてしまったが、「イタリアンネーム」と瞬時に返したら、親父さんは満面の笑みで「イエス」と言った


 マイロにものすごく親切に接していた私達。マイロに日本人の彼女がいると聞いた瞬間、何かわからないが、何かの熱が5度位下がった

 嫉妬なのか?


 彼はもうアメリカに帰ってしまっている。なので、こんなところで名前丸出しで書いてしまった

 許せ、マイロ。お前の事は忘れない

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