第35話 グルメ修行 下克上編
私はグルメでは無い。店を予約して行くことはまず無く、並んで待つこともしない
それでも、おいしいと感じた思い出は尊いと思う
幼き頃の思い出はすこぶる強い
サンドウィッチとホットドッグがどちらがどっちだか分からなかった幼児の頃
家族で出かけた先のお店で、自分の思い描いていたものとは違う方が来て、本当に悲しくなった。普段あまり甘やかしてくれない親が、望みのものを追加注文してくれた。おいしかった
良い思い出だ
就職した頃まで、和食に対するリスペクトが低かった
工芸品のように美しく仕上げた和食料理。それ程おいしいと思えなかった。形と色彩重視だろうなと感じていた
考えさせられる出来事があった
就職して早々、大学同窓の友7人でスキーバスツアーに行った
その中の1人、高○君のお父さんが手続きしてくれた3万円台の安いツアーだった(たぶん2泊、記憶が定かで無い)
泊まりは草津温泉、大○屋
びっくりする位の高級な旅館
朝食から素晴らしい見た目の和食
どうせたいしたことないんだろう、と思いながら食べてみる
うーん
驚愕の事実、どれもこれも、むちゃくちゃおいしい
非の打ちどころが無い
和食をなめていた
評価の逆転がえげつない
日程をこなし荷物を整理して、いざ旅館の部屋を出ようとするときに、旅館の女将が来て、代表者に紙を渡した
370,000円の請求書
7人としても、そこそこな金額
出たよ
バス代にしかならないぐらいの料金で、こんな高級旅館に泊まれるというのは確かに不思議だった
いや、待てよ。最初の約束では、一人3万円台の料金に交通費も宿泊費も含まれていたはず
既に前払いしている
手続きを担当した高○君も困惑していた
バスの予定もあるので、その場はひとまず収め帰路についた。
追加料金があるのかどうかを数日間待っていたが、結局連絡が無かった
高○君のお父さんが補填したのか、旅行業者が何とかしたのか、今でも謎
とても聞けない謎です
それでも、高級旅館で出る和食がなんたるものかを垣間見させてもらった
和食に関してはまだある
柔道で合同合宿があり、その打ち上げ食事会があった
合宿に参加してくれた東京○市大の柔道部の上の方と、お世話になっている(している?)高校柔道部顧問やその他の団体の人と、行ったことのない和食屋に連れられて行った
天ぷらが美味しいという話だった。天ぷらなんて、会社の社食でも食べたりもしているし、感激もしないだろうなぁと思っていた
びっくりした
天ぷらって、こんなに美味しいものなんだ
近所のちょっと評判の良いそば屋の天ぷらは、この料理屋の天ぷらと比べると、どちらかと言えば家庭料理に近かった
(家庭料理なりの美味しさがある)
何がおいしいかと言う事は、その時の体の調子に左右されると思う
小学校の時、夏の炎天下、1時間近く自転車をこいで市民プールへ行った
さんざん泳いだ後、市営プールから出ると、屋台のラーメン屋がよく来ていた
安いので、たまに食べた
シンプルな醤油ラーメンで、ロクに具が無かったと記憶している
ただ、むちゃくちゃおいしかった
そりゃそうだ
これを食べるまでに、汗として大量の塩分を消失していたんだ
あの体調で食べるあのラーメンは、麻薬中毒患者にとっての麻薬
あれ程おいしいラーメンをこれから先、食べられるかどうか自信がない位だ
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