第34話 ナウマンゾウの骨

 これは書いて良いのかわからない話

おじさんから聞いた実話

生々し過ぎるので新作落語風に変えてみた

そのぐらいの温度で読んでもらいたい


次郎兵衛が農作業の合間、上りかまちに座って

茶を飲んで一息付いていた

 近所のサラリーマンの八っぁんが得意そうな顔をして引き戸を開けて覗き込んだ

「いるかい?まだ、儲からない農作業に精を出しているのかい」

「うるさいよ。お前こそ、会社はクビになったのか?」

「クビじゃないよ。いつの間にか籍が抹消されたんだよ」

「何をやったんだい?」


「いや、何もやってないよ、強いて言えば、ずっと会社に行かなかったことかな」

「時々、お前とは距離をとりたくなるわ」

「そんなことで怒る会社なんて、こっちから願い下げだろ」

「それで、怒らない会社は、お釈迦さんが社長で、ガンジーが部長だぞ」

「そんなジジイばっかの会社じゃない」


「分かったよ、それで八っつぁん、何の用だ?金なら無いぞ」

「そんなんじゃないよ。浜名湖の近くの博物館知ってるだろ。あそこで昔のゾウ、ナウマン象の骨を展示してるだろ。あれがこの地にもあったんだよ」

「掘り出したのか?」

「それが地表に出てたんだよね。砂丘の松林のところだよ」

「それでどうした?教育委員会か何かに連絡したのかい?」

「まだだよ。ここにまだ持ってるんだよ、これ売れないかな・・・」と後ろ手で隠していた新聞紙で包んだ物を前に差し出した

「見てみろよ」

新聞紙を広げた。長い骨

「やけに細い骨だなぁ。栄養失調の象か?」

「子供かもしれない」

「なんか見たことある形だなぁ」

「そうかい。金になるかな?」

次郎兵衛は悪寒がした

「まさかと思う。まさかとは思うんだけど、俺をその見つけたところに連れてってくれ」

「お安いこった、牙もあるかもしれないしね」


 2人は軽トラで砂丘の松林に行った

次郎兵衛は砂地に立つと見上げた

「やっぱり」

次郎兵衛は頭を抱えた

「八っつぁん見てみろよ。上の太い枝に何か見えるだろ」

「なんだよ。あれ?ロープたね、ボロボロだよ」

次郎兵衛は下に目をやる

「松の根っこのところにも何かあるでしょう」

「あるねぇ。靴だ、これもボロだ。吹き溜まりに布の切れ端もある」

次郎兵衛は急に手を合わせた

「なんだよ。金なら貸せないよ」

「八っつぁん、その骨、不幸な仏さんのだよ」

「俺もそう思うよ。腹一杯草を食えていたら、こんなとこで死ななかったんだろうね。可哀想なゾウだよ」

「警察に連絡だな、俺が連絡したらややこしいから。八っつぁんがしてくれよ」

「教育委員会じゃないのかい?」

「いや、これは警察だよ。騙されたと思って連絡してくれ」

「そうかい、びっくりするかもね」


ここまでが概ねの話、登場人物は架空

しかし実際のモデルがいる

八っつぁんは実際より2倍ぐらい間抜けにしている

しかし、象の骨だと思って持って来たのは本当の話

じゃあ、ほとんどそのままの話じゃないかと・・・


精一杯生きた人だよきっと


合掌

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