第32話 痛い話

 高校時代の柔道場にはいろんな物が置いてあった

柔道試合場が2つとれる畳敷の空間

その片側の試合場をマットがコの字に囲んでいた

バーベルがあった

もう無くなってしまった器械体操部の残骸

吊り輪の部品

平行棒

近くに廃墟になってしまったボーリング場があったからかボーリングの球もあった

柔道場は体育館の2階に位置し、ドアを開ければバレーコートを見下ろす通路に繋がっていた

その為、飛び込んできたバレーボールもあり、畳の上でサッカーの真似事も空いた時に楽しんでいた


 運動好きでも、運動部の束縛が気になり、はからずも文化部に入った奴らが結構いた。柔道部員の誰かの友達で、そんな奴らも一緒に道場でサッカーをやったりした


ボロいボールだとしても、バレー部のボールでサッカーをやるのは人目が気になり、黒いゴムボールに加工してサッカーをした

どうするかというと、バレーボール表面の皮を剥くのだ。見事に真っ黒なゴムボールになった


ある日、文化部員が休み時間に柔道場で足の骨を折ったというニュースが流れた

私が目撃していない事件

柔道場に私が居なかったときの出来事だ


事情を聞いた

少しぞっとした


A君は柔道場に来て、黒いボールを思いっきり蹴った


その黒いボールが黒いボーリングの球だった


誤認


マットの上にぼつんと黒いボールがあったのだと思う

助走が取れるスペースも偶然あった


A君は予想しなかったその衝撃に驚いたことであろう

足の骨は耐えられなかった


思い込みは恐ろしい


ボーリングの球は容赦というものを知らない

A君は誤認だったが、例え分かっていても、油断ができない

あれがツルツルだからだ

柔道部員がボーリングの球でキャッチボールをしていて前歯を折った

ツルツルだからだ


黒いボールを蹴る時は気を付けてほしい

ボーリングの球でキャッチボールをする時もそうだ


そんな機会は無いか

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