第31話 謎の柑橘類

 橙(だいだい)という柑橘類の果物を知っているだろうか

ただひたすら酸っぱい

存在意義がよくわからない

夏みかんぐらい大きいので、ゆずのように風呂に入れるのも変

食材としても聞いたことがない


冬になると近所の無人販売コーナーに「無料. 持っていってください」と出る


3年前、寒空に並んだ橙を見たとき、これだと思った。煮込むのだ。煮込めばなんだってジャムになる

切った庭の木がいっぱいあるので、薪ストーブを使えばいくらでも煮込める


マーマレードをまずイメージした

皮と薄皮、果肉に分け、マーマレードっぽくなる割合で煮た。できたものは不味かった

皮をもっと細く切る必要があったかもしれないが、皮自体がなんか不味い


 残った果肉だけを煮てジャムを作った

甘酸っぱい。今まで味わったことのない味で

スッキリしていた。黄色くて良い色

酸っぱいという珍しいジャムができた

これは美味しい


次の年

前年ジャムがやや水っぽかったので、半日近く煮込んだ

砂糖が焦げ、色が茶色くなった。カラメルだ

不味い

砂糖がカラメルになることの悪い面が出た


また次の年

ベストな条件で、黄色くて酸っぱくてスッキリしたジャムを作ることが出来た

メイン材料がタダなので大量に作った


 私の経験では橙ジャムがカビたところを見たことがない

手作り苺ジャムだったら数週間でカビてもおかしく無い


大量に作ったジャムは冷蔵庫の中で10ヶ月が経過した。瓶のフタを取る時、プスっと音がした

さすがに発酵してガスが出ている


食べてみると、何も変わっていない

変わらず美味しい

お腹も壊さない


最初から酸っぱいので、変質して酸っぱくなっても気が付かない可能性がある

私の胃腸が人間離れしている可能性も少しある


ある時、私は風邪をひいた

体の力が弱っている

今こそ食べてみよう


400gヨーグルトの半分に大さじ3杯ぐらいの橙ジャムを入れて食べた


美味しく食べれた

体力が弱った身でも、お腹を壊さなかった

橙って謎


余った橙の皮は瓶の中に入れっぱなし。室温で夏を乗り越えても腐っていない

アルコール35度のリキュールを足す


そうやって延命してどうするのか、全くのノープラン


このアルコール漬けを必要とする場面は、人の一生の中ではやって来ないと思う


 これだけやってきて、初めてネットで調べた

鏡餅の上にのっているみかんの様な物が橙

橙はポン酢に入れて橙ポン酢を作るらしい


漂う謎を解く参考にならなかった

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