一話目を読んだときに、文体がとても綺麗で読みやすい印象を受けました。
特に改行の位置などが意識的にしているなと思いました。
また、特定のクリシェなどを使用せず、260話以上に渡って、自分の言葉で書き、自分の言葉で世界を紡いでいます。
物語としては、宝石修復という専門領域が物語の骨格そのものとして機能していて、これは全話通じて一貫しています。
特にロードクロサイトやスフェーンといった具体的な鉱物名が、伏線やトリックの核として精密に組み込まれていて、「知識が物語を動かす」度に、相当調べて書いたんだろうなと感じました。
また、ある展示物の正体が覆される場面では、専門知識がミスリードの装置として
うまく作用しています。完全に読者の視線をコントロールされていたことに気づいた時は、小説ならではの楽しさがありました。
もう一点、私が心を掴まれたのはペース配分の設計です。
飛行船レースの息継ぎを許さない疾走感から一転、ロダの極光の下で流れる静謐な時間へ。この緩急が二人の関係性の変化と連動していることに、深い構成力を感じました。
そして、オスカーがリーシャの食事する姿をただ嬉しそうに眺めているあの描写に、
私は言葉以上の愛情を受け取りました。
語らないことで語る筆致が、素晴らしかったです。
素敵な作品をありがとうございました。
主人公のリーシャは、宝石修復師としての誇りと実績があり、芯を持って行動する格好いい女性でした。行き倒れたという頼りないヒーロー・オスカーにも、守られるのではなく守っていく姿勢であり、とても魅力ある主人公でした。
また、物語に広がるファンタジーの世界もとても素敵で、宝石修復師としての描写も細かく、主人公の仕事さばきには見惚れてしまいます。また、2章から新たな国へ移動していき、その国の文化や土地、技術など、ますます新しい世界が広がっていき、驚いたのと同時にまだまだこの世界には知らないことがあるんだとわくわくしました。とてもおもしろい作品です。