第24話 なんで一緒に寝てるの!?
目を開けると、とてもいい匂いがした。
なんの匂いだろうか? それに柔らかいものを抱いているような?
不思議に思った俺は、目を開けた。
「すぅ、すぅ」
「……」
「むにゃむにゃ」
「は?」
俺は目の前の光景に驚いた。
だって、俺がいすずを抱きしめながら寝ている状態だったから。
俺の頭は激しく混乱していた。
だって、まさかこんな状態になっているとは思わなかったからだ。
「(えっ? まって、どういうこと??)」
俺は必死に寝る前の記憶を思い出していた。
たしか俺はいすずに膝枕をされてそのまま眠っちゃって……で、目が覚めたらいすずを抱きしめて寝ていた。
どうしてこうなった??
とりあえず、いすずから離れないと。さすがに兄妹とはいえマズいだろ。いろいろとな。
慌てていすずから離れようとするが、いすずのしがみつく強さが強過ぎて、一向に離せない。
気持ちよさそうに眠ってるからソッとしておきたかったけど、起こすしかない。
俺はいすずの体を、ゆさゆさと揺らした。
「いすず、おーいいすずさん」
「んー」
「起きてくれー、頼む」
「ふふふ」
しかし、一向に起きる気配がなかった。
困ったなぁ、このままって訳にもいかないしな。いすずには、悪いけど……
俺はいすずの横腹をくすぐった。
「こちょこちょ」
「ん?」
「いすず、起きたか」
「お兄ちゃん?」
すると、いすずはくすぐったかったのか目を覚ました。
これで起きたし、離れてくれるだろう。
「いすず、悪いけど離れてくれないか」
「……」
「いすず?」
しかし、いすずはジーッと俺を見るばかりで離れようとしない。
「お兄ちゃんと一緒に寝てる、つまりこれは夢だ」
「へっ?」
「だから、なにをしてもいいんだよね。だって夢だもん」
「なっ!?」
いすずは何かブツブツと言うと、いきなり俺の首筋に顔を埋めた。
驚いたし、くすぐったい。
「えへへ、お兄ちゃんの匂い♡ すーはーすーは」
「く、くすぐったいから離れてくれないか?」
「やだ」
「やだって、なんで?」
「だって、お兄ちゃんの匂いを堪能したいんだもん。だから、絶対に離れない!」
「こら、いい加減に……」
「むーっかぷっ」
「わっ!? なっなにやってるんだよ!」
「かぷっ。なにって、おにいひゃんをかんでるんだけど」
かぷかぷと甘噛みで、肩を噛まれた。
まさか噛まれるなんて思わなくて、身をよじる。が、いすずはさらに甘噛みをしてきた。
「お兄ちゃんが悪いんだぞー、離れてなんていうから」
「いや、俺悪くないんだけど!?」
「悪い子なお兄ちゃんには、ちゃんとお仕置きしないと」
「お仕置きって……っ!?」
生ぬるい感触が肌を撫でた。一体なにをされたのか理解することができなかった。ゾクゾクと鳥肌がたち、理解した時には遅かった。
「い、今首筋なめて」
「えへへ、お兄ちゃんのこと食べちゃった」
舌を舐める音が聞こえてくる。
「これだけじゃまだ足りないな。もっとお兄ちゃんが欲しいんだ」
「っ!」
再びいすずは、俺の首筋を舐めてきた。ぺろっと音が聞こえる。
生温かくて、ゾクゾクとした感覚が体中に響く。
「お兄ちゃんにお仕置きするっていったけど、これじゃあご褒美になっちゃってるかな?」
「ご褒美なわけ……」
「でも、体は熱くなってきたよ。反応してるんでしょ?」
たしかにいすずに舐められるたび、体中が熱くなっていく。今までにない感覚だった。
このままじゃだめだ、早く引き離さないと!
「い、いい加減に離れろ!」
「やだ、お兄ちゃんとイチャイチャするの」
「イチャイチャって」
「だって、夢じゃなきゃこんなことできないんだもん。たっくさん堪能しなくちゃね」
その言葉を聞いて、理由が分かった。
さっきからいすずの様子がおかしいと思ったが、どうやら夢と勘違いしているようだった。
「……」
「お兄ちゃんどうしたの? もしかして、本気になってくれた。ふふ、じゃあご褒美を……」
「こちょこちょ」
「にゃ!?」
「こちょこちょ」
「にゃ?! お、おにいひゃん?」
俺は夢だと勘違いしているいすずを起こすべく、くすぐりまくることにした。
「へっなんでくすぐったいの? だってこれは夢で」
どうやらくすぐられたことで、いすずは夢なのにおかしいということに気がついたようだ。
「夢なわけあるか! これは、現実だぞいすず」
「そ、そんな、つまりお兄ちゃんにあれこれしたことは……」
「あぁ、現実だ!」
俺がはっきりと宣言すると、いすずは素早いスピードで俺から離れた。その顔は真っ赤っかで、目は潤んでいた。
「しょ、しょんな、夢じゃないの? 夢なんでしょ」
「夢ならくすぐったいか? 信じられないならほっぺたをつねってみなさい」
「い、いひゃい、つまり現実で夢じゃないってこと!?」
いすずは、ようやく夢じゃないことに気がついたようだ。その場にへたりこんで、顔を手のひらで隠している。
「さ、さっきのは忘れて! あれは、夢だと思ったからやっただけで!!」
「夢だと思ったら、どうしてあんなことができるんだよ」
「あぅ」
「人の匂い嗅いだり、噛んだり、舐めたり……」
「わ、わかったからもう言わないで! 理由を話すから!」
いすずは手を前に出すと、バタバタと動かした。よほど恥ずかしいみたいだ。
まぁ、たしかに俺もそんなことやった日には恥ずかしくて、引きこもっちゃうね。
「お、お兄ちゃんの匂いを嗅いだり、噛んだり、な、舐めたのはその……」
「……」
「あ、あの、それは……そう、私そういう趣味があるの!!」
「はっ? 趣味」
「人の匂いを嗅ぐと落ち着くでしょ? だから、つい人の匂いって嗅いじゃうんだよね〜」
「じゃあ、噛んだのは?」
「わ、私噛み癖があって!」
「じゃあ、舐めたのは?」
「舐め癖があるんだ! 人前でやっちゃうなんて、恥ずかしいなぁー」
いすずの言い分としては、全て癖のせいらしい。なるほど、それなら納得できるな。
「てっきり、俺のこと好きなのかと思っちゃったよ」
「にゃ!?」
「だって、匂い嗅いだり、噛んだり、舐めたり、イチャイチャしたいとか言ってたから、まさかと思ったけど」
「お、お兄ちゃん、違くて」
「そういう趣味があったんだな、知らなかったよ!」
「うぅ、私のバカァァ」
あれ? なぜかいすずが泣きはじめたんだけど? どうしてなんだ。
なぜか泣き出したいすずを見て、不思議に思う。もしかして、趣味がばれて悲しかったのかもしれない。
「まぁ、そんな日もあるって。元気出せよ」
「うぅ」
「バレちゃったのは仕方ないって。次気をつければいいんだからさ」
俺はいすずに頭を撫でてやりながら、必死にいすずを励ました。
が、いすずは泣き止まなかった。
「お兄ちゃんのバカァ」
「えっ!? なんで俺バカ扱い!?」
「バカはバカだからだもん、うぇん」
それどころか、バカ扱いをされてしまった。
「なんで、バカ扱いなんだよ」
「そ、それは……自分で考えろ! ざぁこ、ざぁこ!」
そういうといすずは、俺の部屋から出て行ってしまった。
「たくっ、まぁあれなら大丈夫そうだな」
さっ宿題の続きでもやりますか。
俺は胡座をかくと、テーブルにのっているプリントを解き出した。
「(テストまで、もう少しだからな。寝たおかげで、なんか頭がスッキリしてるんだけど)」
結局その日は、深夜まで問題を解き続けたのだった。
「(これなら、めちゃくちゃいい点数とれそうだ!)」
*
「どうして気がつかないのよ! あの鈍感男」
ちなみにいすずはというと、部屋で拗ねていたのであった。
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