第12話 少数精鋭

 ログインするとタヨタ銀行屋上に居る。新しい拳銃を見て目尻を下げながら口が半開き状態だ。涎が垂れると口を閉じ、また拳銃に魅入ってしまう。


《ギルド:1万リベル、S赤ポーション、S青ポーションを取得しました》


 するとメッセージを見て恩恵があることに目が見開いた。もうギルドハウスが完成したのかと、ヘカレスがログインしたら聞いてみよう。


 本を見ながらスキルを何に振るか考えていた。ハイドも面白そうだが、使い勝手が行動と噛み合わない。ステルスを覚えればハイド状態で動けるのだが、攻撃をしたら姿が現れてしまう。


 いっその事、トラップのレベルを上げて爆弾でも仕掛けるか?

 ……と思ったが遠距離がメインのため使えないし使わない。スキルが有り過ぎて1つずつ見ていくのが面倒臭い。


 するとフェザータッチというスキルを見付けた。

 レベル1でDEXが10上がる。遠距離職にとってDEXはダメージが上がる重要なステータスだから欲しいところだ。


『羽毛のように優しく触れるフェザータッチは、触れたことすら気が付かない』


 気に入ったのでフェザータッチをレベル10にした。残りのラーニングポイントは6となる。

 だがDEX+100の効果は大きい。


 タヨタから北東に位置するシノ湖で、ウォーターエレメント狩りが効率が良いと掲示板で観たので行くことにする。シノ湖は青ネームの街であるガバマントの北に位置しているので、なるべく街の反対側で狩りをしたい。


 ポータルブックを開くとマークされていることに「あっ」と声を出していた。全て網羅しているのかと思いながらシノ湖へ飛ぶ。


 場所は北側であり願ったり叶ったりだ。流石赤ネーム用と言うだけのことはある。

 かなり大きな湖で反対側が薄っすらとしか見えない。そして北側は岩場なため隠れるには丁度いい。


 双眼鏡を構え、岩場からの距離が1、200mの所を発見すると、スナイパーライフルに持ち替えてスコープを覗く。


 まるで水でできた女神のようだ。髪の長い女性の姿は精霊という言葉に相応しく、とても美しい。


 さてヘッドショットはできるのだろうか?

 一発の銃声が鳴り響くと、ウォーターエレメントの身体が崩壊し、滝のように零れる水は無数の波紋を作り出す。


 ヘッドショットは効くようだ。そして敵は沢山居るがプレイヤーを見かけない。

 これは穴場だなと思いウォーターエレメントを倒していく。


 倒すだけで戦利品は奪えないのだが、経験値が欲しいのでこれでいい。

 倒しても倒しても湧いてくるウォーターエレメントは狩りにもってこいだ。ただ若干飽きてきた。同じ行動を繰り返すのは苦手だ。


「慣れは時に失敗を招くでしょう。

 驕りは時に油断を生むでしょう。


 どんな時でも謙虚であれ、

 そのような方に運は味方するのです。

 ヤハウェの旧約聖書:2章2節」



 すると赤い人の姿をした者が現れると、ウォーターエレメントが溶けていく。

 名前を見るとファイヤーエレメントと書いてある。誰かの魔法であることが分かると、双眼鏡に持ち替えて辺りを見回した。


 すると1人の女性が魔法を詠唱している。

 その魔法は湖に炎の壁を作り、沢山のウォーターエレメントが溶けていく。女性の顔を見て眉間に照準を合わせると、躊躇なくトリガーを引く。


 放たれる金色の弾丸。宙を舞う硝煙が風で流され、薬莢が転がる音がする。

 すると弾丸は女性の眉間に当たる寸前に、ファイヤーエレメントが立ちはだかる。防いだというよりも溶かしたと表現した方が的確だった。


 ――嘘でしょう。溶かすとかあり得ないってば。


 存在に気が付いた女性は、沢山のファイヤーエレメントを出すと、辺りを見回している。双眼鏡無しで1、200m先を探すのは至難の業だ。だがスナイパーライフルの攻撃を防いだのは凄いと感心してしまう。


 すると炎の龍が舞い上がり、彼女の後ろで待機している。ファイヤーエレメントの隙間を狙って女性の眉間に弾丸を撃ち込んだ――


 するとファイヤーエレメントが間に入り、又もや弾丸が溶かされてしまう。

 そして炎の龍がこちらへ飛んでくる。


 あり得ない。双眼鏡も無しにここの居場所を知ることなどできない。

 これは多分、女性の意志に関係なく自動で動いている。だから弾丸を溶かしてみせて、炎の龍が攻めてくるんだ。


 炎を吐き出す龍。ギリギリまで近付くのを待って炎を吐いた瞬間――

 すかさずポータルブックを開いて飛ぶと、女性との距離200mまで近付いた。


 拳銃に切り替えて女性に撃ちまくると、周りを囲むファイヤーエレメントを倒していく。背後から来たことに驚き、詠唱の状態に入る彼女。


「魔法領域解放、ディメンションコード452。焦がせ荒神、紅蓮の業火」


 両腕が燃えだした。その腕を突き出すと炎の弾を飛ばしてくる。

 見た目より攻撃範囲が広い。大きめに避けないと火傷する。放たれた炎の弾をロンダートからの後方宙返りで躱すと、逆さの状態で拳銃を連射する。


 全ては溶かされるが、ファイヤーエレメントの数も減ってきている。

 魔法を詠唱する隙を狙ってナイフを投げると、ファイヤーエレメントを突き抜けて眉間へ飛んでいく。


 ――もらった。


 女性に突き刺さる瞬間――

 炎の龍が体を包み込み、ナイフが地面に突き刺さる。走って近付き連射して炎の龍を撃ち滅ぼすと、女性はポータルブックを出した。


 ――行かせない。


 連射した弾丸は回転して女性の眉間を撃ち抜いた。

 宙を舞う硝煙の香りを嗅ぎ、鞄から財布を開くと12万リベルを盗み取る。


 折角の狩場を荒らした彼女が悪い。

 青ネームは狩られる立場なのだからと、親指を立てて下に向けて言い放つ。


「あんた弱すぎ、地獄へ堕ちな!」


 そして、ポータルブックを広げてタヨタへ飛んだ。

 早速、銀行にお金を預けると所持金が148、925リベルになった。レベルは2上がりレベル18となる。


《お知らせ:賞金が上乗せされました。只今の金額は93万リベルです》


 そうなるよねと思いながらも、そう言う仕様だからさと言って笑う。

 それよりイタマールの顔が浮かぶ。特殊な任務と彼は言った。URLが書かれた紙を受け取りゲームをしているのだが、未だに依頼主に辿り着けない。


 任務成功率は100%だ。だからイタマールに聞き直すなんて恥は晒せない。自身の力で探さなくてはならないのだが、この世界は広すぎた。


 相手も探すので一苦労しているかもしれないし、沢山のエージェントが放たれたかもしれない。だが一向にアポイントメントはない。


 ――なんかもう探すの疲れたな。


 こんな遠回しではなくて、イタマールを介して依頼してよと思った時。イタマールを介して依頼ができない。そうイタマールに知られたくない依頼と言うことに気が付いた。


 それが分かったところで、依頼主やエージェントに会う方法が不明なのだから、同じくヘルプを見て四苦八苦している姿を思い浮かべる。なんか笑いが込み上げてきた。


《マーガスさんと通話しますか?》


 するとメッセージが入ったが、通話の相手が分からない。もしかして依頼主かエージェントかもしれないと思ったので、Yesをタップして通話を開始する。


「どなたですか?」


「俺は咒鬼の者だけど、ヘカレスと新ギルド立ち上げたよね? 加入したいんだけど、推薦してもらえないかな?」


 一瞬で肩の力が抜けた……。

 期待を裏切られた恨みを晴らすべく返答をする。


「ヘカレスに決定権があるから、直に聞いてください」


 と言って通話を切る。

 まるでクレーム対応のオペレーターのようだ。友達登録をしていると相手の所属するギルド名が分かる。だからギルドを作ったと分かったんだろう。


 そして冒険の書のギルド関連ページを見て、試しに『餓狼牙』で検索するとギルマスの名前が出る。その横にサブマスでカブリエラの名前が載っている。


――おいっ、いつのまに!?


 それで連絡が来たのだろう。誰を加入させるかはヘカレスに選ばせたい。ハザードとは良く狩りをする仲間だったようだから、裏切られたショックは大きいはずだ。


 するとヘカレスがログインしたので、通話依頼が沢山飛んでいる頃だろう。

 咒鬼のギルマスはカレンとなっている。咒鬼のサブマスだったのか、それとも他の者が名乗り出たのかは知らない。


 しばらくしてタヨタ銀行屋上に沢山の赤ネームが飛んできた。行き成りのことで拳銃に手が伸びる。


「やるなら手加減しないよ!」

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