アラフォーパート主婦、どうやら異世界転移したらしい
丘月文
第1話 人生には時々こんなことある? ってことが起きたりする
2月2日、午前11時。世界が変わった。
今まで知っていた世界に、私はもういなかった。
そうして、どうしたって元の世界にもどれないことが分かった。
一時間前にいた世界には、絶対にもどれない。どんなに泣いても、狂っても、覆らない。
愛する夫が生きていた、あの世界には。もう絶対に帰れない。
2月2日、午前11時、あの人が生きていないという異世界に、私は転移した。
ただただ普通の毎日だった。
夫婦喧嘩もしたし。くだらない理由で離婚するとかって言ってたり。でも時々、お風呂で背中を流してあげたり。
さきに子供に夕御飯を食べさせて、あの人の「ただいま~」を待ってリビングにいたり。夕御飯を食べながら愚痴を言うあの人に付き合ってホット麦茶を飲んだり。
寝る前に飲んでいるあの人のルイボスティーを一口もらったり。
リビングのソファーで二人並んでそれぞれ動画に熱中したり。眠くなって「おやすみ」と言って。
本当にそんな世界だった。穏やかで幸福で平凡な、普通の世界だった。
たった30分くらいの出来事だったらしい。お医者様が言うには。
心臓近くの大きな血管がつまって破裂して。30分であの人の心臓は止まってしまった。30分前まで、普通に活動していたのに。
出勤して制服に着替えて、同僚と冗談を言いあっていたらしいのに。
その30分で、彼の生命維持活動は止まってしまった。死んでしまったらしい。
こんなことがあるんだって、書いていてもまだ実感なんかわかない。
たぶん、きっと、一生、こんなことある? って腑に落ちないままなんじゃないかと思う。
でも実際に起こった。
そうして私は、愛する人と一緒にいられた世界を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます