ルートA  純愛 END

第24話 分岐点  ルートA 純愛END



 カズトの内側からが聞こえる。



『ようやく自由になったか。じゃあ、さっさと



 今にも途切とぎれそうな意識の中、俺は―――――






 <ルート分岐>



 ▶ A  神核の力を犠牲にして、二階堂にかいどう和徒かずとを否定した。



   B すべもなく飲み込まれ、完全に意識を失ってしまった。



   C 二階堂にかいどう和徒かずとに主導権を奪われてしまった。






 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






〖 ルートA 純愛END 〗




 俺は―――。


 俺は―――――。


 俺は―――――――。



 俺は、二階堂にかいどう和徒かずと



 前世の自分、もうひとりの俺、それが二階堂にかいどう和徒かずと

 あの日、すべての始まりである成人の儀の日、そこで俺は前世の記憶がよみがえった。


 地球という世界、日本という国、高度な文明、

 街並みも―――

 生活様式も―――

 そこで暮らす人々も―――


 まごうことなき異世界。すべてが新鮮で、異様で、おかしかった。


 ―――でも、そんな事どうでもいい。


 なぜなら、それ以上の衝撃があったから。



 二階堂にかいどう和徒かずとは、人の皮をかぶっただった。


 あれが前世の自分だなんて、到底受け入れられない。

 あいつは、なぜあんなことをした? なぜそんなことを平然とできる? 


 なぜ?


 なぜ?


 なぜ?



 成人の儀が終わる頃、突然青白い光に包まれて神核を得た瞬間、俺は前世の自分である二階堂にかいどう和徒かずとれて―――即座そくざに否定した。


 手に入れたばかりの神核の力を使い、一心に拒絶する。

 どこからか聞こえる「厄災から世界を救え」なんて言葉も、まともに聞いている余裕なんて無かった。


 その結果、神核の力のを使って、二階堂にかいどう和徒かずとを封印した。


 まだ神核の力を上手く使いきれてなかったのだろう。その封印は不完全で、定期的に反動があった。

 胸に激痛が走り眠れない夜もあった。

 ちょっとした感情の揺れに押されて、封印が解けかけたこともあった。


 もっとも致命的だったのは、封印の際にがむしゃらだったせいで、ことだろう。

 だから、封印したことすら覚えていなかった。


 二階堂にかいどう和徒かずとを封印できればよかったが、そう都合よくはいかない。

 そもそも神核の力は、本来こんなことのために使われる力ではないからだ。

 あふれんばかりの奇跡の力、それを無理やり封印に使えたというだけ。


 だから、封印が不完全だったのも仕方ない。そしてそのせいで、いずれ封印が解けてしまうのもやむを得ないことだった。






 ユーメィたちの救出、そして捜索部隊として先に出発したアイナが心配で、俺も捜索部隊に加わった。

 この事件の全容ぜんよういまだ不明だが、俺の目的であるアイナとユーメィは見つかった。後は無事に都市に帰還するだけ。

 だが、その帰り道の途中、『奇妙な女性』に遭遇そうぐうした。

 強制的に神核の力が解放されたことから、この相手が『厄災の元凶となる敵』なのかもしれない。


 でも、そんなことよりも、強制的に神核の力が解放されたことにより、二階堂にかいどう和徒かずとの封印が解かれてしまったことの方が問題だ。


『ようやく自由になったか。じゃあ、さっさと


 俺の内側から和徒かずとの声が聞こえる。

 今まで封印していたモノが解き放たれた反動で、俺が俺自身をたもてなくなる。


 意識が飛びそうだ。


 身体の自由は無くなり、地面に倒れしている。


 アイナやシラソバから声を掛けられるが、反応する余裕がない。



 ―――このまま意識を失えば、何が起こる?


 もう二階堂にかいどう和徒かずとのではないか?


 それはまずい。絶対にダメだ!



 ――――――――――――――――――――



 ―――二階堂にかいどう和徒かずとは、アイナのことを……前世の流崎りゅうざき愛名あいなのことを……ただの玩具おもちゃとしか思っていなかった。



 和徒かずとにとって愛名あいなは、いずれ壊す予定の玩具おもちゃ。今まで何度もそうしてきたようなガラクタの一つにすぎない。

 気に入った女性おもちゃを見つけると、偶然をよそおって近づき、相手の心の中に入り込み、身体を快楽で満たし、最後には堕落させて奴隷にする。

 心身共にとされた女性おもちゃは、その身のすべてをささげて悪魔和徒に奉仕する奴隷になる。


 そんなことが出来てしまえる資質があいつにはあった。なぜなら、二階堂にかいどう和徒かずと外面そとづらは完璧だったから。

 資産家の息子で、オシャレな美男子。スポーツ万能で頭も良く、一流大学に在籍している。コミュニケーション能力に優れて、人当たりも良く、思いやりのある性格。常に周りの人に囲まれている人気者。

 そんな完璧な人物を


 流崎りゅうざき愛名あいなも当然にだまされていた。

 愛名あいな和徒かずとの本性に気づいていない。和徒かずとを理想の彼氏として心から愛していたんだと思う。

 偶然にも、愛名あいなを堕とす計画の最終段階に入る前に、彼らの前世が終わっただけ。そういう意味では、愛名あいなの前世は幸せに終われたのかもしれない。何も知らないままで。


 二階堂にかいどう和徒かずとの本性を知っているのは1人だけ。

 両親すら気づいていない。知っているのは―――前世の幼馴染の結城ゆうき華古かこのみ。



 ――――――――――――――――――――



 二階堂にかいどう和徒かずとを表に出してはダメだ。


 あいつが前世で何をしてきたか、俺は知ってしまったから。

 必要だと判断すれば犯罪をもいとわなかった。

 それによって多くの人々の人生が壊されていた。

 狡猾こうかつにして無慈悲。まともな倫理観を持っていない。


 なによりも俺が恐れたのは、和徒かずとは他人をおとしいれる時に、ということだった。


 カズトと和徒かずとの人格が一瞬でも混ざり合おうとしたからこそ、俺には分かる。



 ―――だから、俺は。



 今にも途切とぎれそうな意識の中、俺は―――――



『 神核の力を犠牲にして、二階堂にかいどう和徒かずとを否定した。 』



 このタイミングしかない!


 今の俺なら神核の力を使いこなせる!!


 目の前にいるを無視して、俺の内側―――内面にひそ悪魔和徒にだけ集中する。


 ―――俺は神核というあやふやな存在を、『悪を抑える力』と定義した。


 この世に存在してはいけないモノ。人々の生活をおびやかす脅威きょういすなわち、厄災。

 それを抑えて、永久に封印するために、俺に神核は与えられたんだ!



 すべての力を使って二階堂にかいどう和徒かずとを追い込む。


 二階堂にかいどう和徒かずとという存在を、大きな箱の中に閉じ込めるイメージ。和徒かずとの意識、人格、そのり方。すべてを箱の中に詰めていく。


 激しい抵抗にあった。けして交わらないとはいえ、和徒かずとも俺の魂の一部。

 自身の一部を永久に隔離かくりする、それはある意味、自身の存在の否定。

 正確にカズト和徒かずとを仕分けて、分断していく作業。

 どこからがカズトで、どこまでが和徒かずとなのか?

 その判断に自我が矛盾をきたし、崩壊してしまいそうになる。


 ―――でも、があった。


 ―――それは、アイナへの想い。


 俺は、あいつとは違う。アイナを心から愛している。


 幼い頃からずっと一緒で……、いや、前世から共に、長い時を過ごしてきた。

 異性への愛情はもちろんのこと、家族として姉弟としても切っても切り離せない最愛の人、それがアイナ。

 俺の想いは、アイナだけでなく、流崎りゅうざき愛名あいなをも含んでいる。

 都合が良すぎるかもしれないが、和徒かずとの記憶の中の愛名あいなにすら愛情を感じている。和徒かずとの想いなど関係ない。カズトがアイナのすべてを好きなんだ! 愛しているんだ! この想いはカズトだけのもの。


 アイナへの想いを手掛かりに、二階堂にかいどう和徒かずとを拒絶し、引き裂き、大きな箱の中に押し込めていく。

 和徒かずとではカズトに勝てない。誰かを強烈に愛することも出来ない和徒かずとには!


 最後に、箱にふたをする。もう2度と出てこられないように。

 そして、すべての神核の力を注ぎこんで、永久に封印をしようとする。



 一瞬、すさまじい胸の痛みが襲い掛かってくる。痛みが全身に伝播でんぱし、息ができなくなった。


 それと同時に俺は理解した。

 自身和徒を完全に封じるという行為により神核の力をすべて使い、その力を失うということは、―――神核をする行為だとみなされた、と。


 神核保有者。厄災から世界を救う勇者としての責務、それをなのか。


 耐えがたい苦痛。このままでは封印が完了しない。


 ―――このままでは、まずい……。


 痛みで意識が朦朧もうろうとしていく中、目の前にいるが俺の意識の中に語り掛けてくる。



『それが貴方の選んだ選択なら、従いましょう』



 不思議な力が流れ込んできた。

 神核とは異なる力。それは温かく、穏やかで、それでいて力強くもあった。


 全身を襲う痛みが引いていく。

 不思議な感覚に包まれながら、俺はの神核の力を使い、






 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます。


 現状、ENDは3つ用意してあります。


 ルートAは、『 純愛 END 』です。次回で終了となります。


 ルートBは、『 BAD END 』です。1~2話を予定しています。


 ルートCは、『 NTR END 』です。


 一応、ルートCがメインルートのつもりです。伏線の大部分はこのルートで回収されます。

 ただ、まだラストを決めきれていないので、5万~10万字くらいの予定とだけさせて頂きます。


 さらに、についても、ずっと判断が着かず、決めきれておりません。


 そこがどうなるか、という点も含めて、今後もお付き合い頂ければ幸いです。




 応援の♡や、レビューの☆、それにご感想など、本当にありがとうございます。

 とてもはげみになっております。


 最後まで読んでもらえるような作品にしたいと思っています。

 読者の皆様、本当にありがとうございます。







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