第30話 恐怖テレビ

 朝夕がめっきり涼しくなる9月も終わる頃から、なぜか怖いテレビの放映が始まる。


 ぞくぞくする番組は、暑い夏の夜こそ効果的なのに、夜風がひんやりする頃から、恐怖テレビが始まる。


 怪談、オカルト、心霊スポットなど、恐怖番組は怖いけど好きである


 見たくないけど必ず見る。しかもひとりで。怪談より、オカルトより、実話の心霊ものが怖い。


 実話だけにことさら怖い。だけど・・・・・必ず見る。呪い、恨み、怒り、残した未練、さまよう霊・・・・・


 見えないものが出現し、身体を縛る。見ているうちに、テレビの中に入り込み、テレビの恐怖を出演者とともに恐怖する。


 鼓動が早まり、掌が汗ばむ。背筋が凍り、冷たい汗が額を濡らす。


 「絶対に見てはいけない」


 テレビからの警告が目を奪う。身体を硬直させ、震える心を捕らえる。背中の闇が鼓動し、血色の瞳に見つめられる。


 気配が蠢き、生臭い呼気が漂う。


 怖いテレビ終了後、どんなに賑やかな番組も、冷えた心を暖めない。お笑いの騒々しさも、凍る空気を溶かさない。


 心が占領されている、恐怖そのものに・・・・・


 部屋が霊気で溢れてトイレに行けない。トイレの中に何かがいるから。


 たぶんいる。いや、きっといる・・・・ぜったいにいる・・・・・


 我慢して眠りにつくが、必ず夜中に目が覚める。我慢の限界、深夜2時に目が覚める。トイレのドアを開け放し、ビビりながら用をたす。


 ズボンを半分引き上げながら、あわてて部屋に飛び込む。身体を暖めるはずのベッドが、なぜか人型に盛り上がっていた・・・・・


 毛布から長い黒髪が、はみだしたままに・・・・・

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