鷲の独り言

 今日はテレビを壊されてしまった。

 私の父は相当、苛立っていたらしい。

 さて、目下の情報収集は図書館で新聞でも読むとして、娯楽は……、まあ児島君の家に上がらせてもらってテレビを見させてもらおう。

 もしこの状態でNHKが来たら、どうなるか見物だな。

 解約手続きがスムーズに出来ると良いのだが。

 我が家に新しいテレビを買う金はあるのだろうか。

 買っても壊されるという可能性もあるため、家電の新調は慎重にだ。

 母上の給料も父に勝手に使われる。

 暴力で家庭を支配するというのは、どうも好かない。

 父に殴られた時、私もやり返したこともあるのだが逆上された。

 それで眼鏡も壊れ、買い替えるだけの小遣いもない。

 この怪我についての学校への言い訳も考えなくてはならないな。

 カツアゲ高校生との喧嘩の果てとでも言っておこうか。


 母上と相談の上、私達は所謂、夜逃げをすることにした。

 家庭内暴力で弁護士に頼むのにも金がいる。

 生きていくのにも金がいる。

 金、金、金、世知辛いことだな。

 何処へ辿り着くかは母上任せだが、まあ大丈夫だろう。

 逃げた先で、またやり直せばいい。

 生きていれば、きっと、何とかなる。


 心残りは無いわけではない。

 結局、最後まで私の秘密は明かさなかったか。

 手紙は児島君に託した。

 白鳥後輩と橘後輩は、いつ真実に辿り着くことやら。



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アルタイルへの道 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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