第31話 一人検証(Мダム)と新しい御守りと①

「ツヴァイリングホラーチャンネルの朔夜でッス☆ コタローのファンの視聴者さんには、大変申し訳ないですが、これからしばらくは俺一人での心霊スポット検証がメインになりますので、ヨロシクお願いしまーす!」


いつも通り三脚を立ててのオープニングの撮影だが、朔夜くんの言葉通りコタローくんはいない。


「あ、コタローと不仲になったとか、そんな理由じゃないんで、ご安心下さい!何も言ってないのに、現場まで送迎してくれるくらいには愛されてますんで――って、自分で言って、恥ずっ……!」


真っ赤な顔で、はにかむ朔夜くんが可愛い。

一言で言うと『神』! カーミーサーマー!!

……なむなむなむ。


「勿論、コタローは近くにはいません。撮影の妨げにならないように、ここから車で十分ほど離れた場所で待機していますし、時刻は間もなく深夜一時になるところですが、約束の四時までは戻って来ません。俺達の動画は、後付や加工などのヤラセは一切しないリアルホラーチャンネルです」


朔夜くんと撮影機材を現場に置いて、コタローくんは離れて行ったのだけれど、その顔には『心配』と大きく書いてあった。

……きっと、断腸の思いだったに違いない。今も不安に駆られているかもしれない。


コタローくんの代わりになんてなれないけど、私は死んでも二人のファンだ。

不肖幽霊ではありますが、私の最大限の力でもって朔夜くんをお守りします!!



「では、気を取り直しまして――本日、俺がやって来た場所は『Мダム』です。ここは実際に、建設時に作業員の方が、崩落事故に巻き込まれ亡くなったり、かなり高さのあるダムなので、自殺者が絶えないとの噂もあります。今日は俺一人なので、安全に気を付けつつも、しっかり検証して行きたいと思います。では、早速行きましょう!」



おー!


特製GoProを持った朔夜くんが歩き出したのに合わせて、私もしっかりと後を憑いて行く。


私は身を弁えた幽霊ファンなので、必要以上に朔夜くんに近付いたりしません。

以前のように、カメラに映らず、朔夜くんのアンテナにも引っ掛からないギリギリの所で、尚且つ私がアクションできる所から、お守りしようと思っています。

……思っていました。



突然ですが、ここで朔夜くんの今夜のファッションチェーーック!!


真っ白のフード付きトレーナーに、ライトブルーのデニムジャケット。黒のスリムパンツという、実にシンプルな装いであるが……真っ白のフード付きトレーナーの胸元には、『バカ真面目』という文字がある!

こ、これはコタローくんの服だと思われます!!


おおっと!足元は、某有名スポーツブランドの白色のスニーカーだ!確かこれは、ロゴの色違いオソロだ!!


この状況は、無意識か意識的か!?

着替えを見ていない私には分からないが、可愛い!

やってることが可愛いぞ!!朔夜くん!!!


これが不安が故の行動ならば、萌えしか感じない。

萌え萌えきゅーーーん!!!!


ぜーはぁー……ぜーはぁー……。


ベージュカラーに染められたウェーブがかかった韓流センターパートの髪の左サイドには、二箇所にバッテンにしたヘアピンが付いていて、朔夜くんの綺麗な形の耳がバッチリ出ている。


その耳には、シルバーのフープピアスの他に、もう一つのピアスが付いているのだけれど、私が突然ファッションチェック何かをしだした理由はソレにある。


――【五芒星】の形をしたピアス。

先生懇親の御守り《いやがらせ》だ。


五芒星には、古代より、邪を払い、場を浄化する効果があるとされていて、安倍晴明が好んで使用していたとされている紋章であるそうだ。


五芒星を描く線上には、米粒のように小さく細かい字で、何やら色んな呪文が書かれているらしく……それによる効果が、私の『朔夜くんを守ろう』という意思を阻んでいるのだ。


ふらりと朔夜くんに近寄りたい気持ちにさせられるのに、うっかりと近寄ったが最期。パーーーン(木っ端微塵)される。

――そんな予感がすると、私の本能が告げている。


はに~〜とらっぷ!!

(キュー◯ィーハニー風で)



『御守りがピアスって………色んな意味で、重くね? いや、好きな相手からのプレゼントなら嬉しいよ。でも先生からっていうのが』

『良いから、早く付けて』

『なあ、付けたら外せなくなるとか……ないよな?』

『……』

『コタロー?』

『……』

『お、おい!?』

『…………』


ピアスを付けることを渋る朔夜くんに、業を煮やしたらしいコタローくんは、朔夜くんから五芒星のピアスを奪うと、実力行使で危なげもなくスムーズに耳に付けてしまった。

そんなコタローくんの耳にも、同じ五芒星のピアスがあったのだけれど…………。


嗚呼、総じて尊い。どんなご褒美ですか……!!(嬉々)


あの時の光景を思い出すだけで、パト◯ッシュの元に逝けそうだ。逝かないけど。


御守りの力は私にとってトラウマものであるために、少々複雑ではあるが、朔夜くんの守りが強固なのは何よりである。



「早速ですが、トリフィールドを使用したいと思います」


……おっと!

のんきに考え事をしている場合ではない。


御守りには敵わないけれど、今夜の私は朔夜くんの守護霊なのだから!!





――ということで、続きはまだ次回に!!

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