ぬいぐるみが教えてくれたこと
天城らん
ぬいぐるみが教えてくれたこと
小学校の低学年の頃、お気に入りのぬいぐるみを親に捨てられてしまったことがある。
茶色のおさるのぬいぐるみ「さるる」だった。
ある日、さるるがいないことに気が付いて母親に問いただしたら、私がこぼした甘い飲み物が付いてしまい洗っても綺麗にならず、先週のごみの日に捨てたと言う。
ショックだった。
私は一週間は泣き続けた。
けれど、どれだけ泣いても
お人形遊びのメンバーにいないし、手をつないで連れまわしたくてもできない。
どこを探してもいないし、会いたいのに会えない。
まさに死だった。
さるるは、死んだのだ。
*
もう少し大人になった高校性の頃、ハウスダストのアレルギーになった。
季節の変わり目などに、喉が痛くなったり咳が出る。
頻繁に掃除をしてもあまりよくならずしかたなく、古いぬいぐるみを処分するしかなかった。
おさるのぬいぐるみの次に付き合いの長い、白いくまのぬいぐるみの「まーちゃん」だ。
生まれたときからの付き合いだ。なんとか残せないかと少しほどいて詰め物を調べたら、綿だけでなくポリウレタンのスポンジが入っていてそれがぐすぐずになっていた。
存命は難しかった。
まーちゃんの命と私の体調を天秤にかけ、私は自分の体調を選んだ。
そうするしかなかった。
自分の命より、まーちゃんの命が大切などという綺麗事が言えるほど子供ではなかった。
私は、最後にまーちゃんを目に焼き付けようとよく観察した。
白くフワフワだった毛は、何度も洗濯をして毛玉になっていた。
以前は、耳にピンクの花飾りがついていたがそれも解けて無くなり、私が紫色のリボンを縫い付けた。
鼻先もボロボロで、繕いすぎて形も変わっていた。
寿命だ。
そう自分に言い聞かせた。
私は、ポロポロと涙をこぼしながら白い袋にまーちゃんをぎゅうと詰めて、火曜日のごみの日に自分で出した。
まーちゃんはゴミじゃない。
けれど、近くで人形供養をやっているところもなく、私は手を合わせてゴミ収集車を見送るしかなかった。
*
母は、私のおさるのぬいぐるみを捨てた。
私も、白いクマのぬいぐるみを捨てた。
そこには、同じ思いがあったのかもしれない。
私の体を大切にするという。
衛生面から考えると、
それに今ごろ気づいても、気恥ずかしくて母に確認することは出来ない。
たぶん、母は忘れているだろう。
それでもいい。
さるるとまーちゃんが、私にそのことを教えてくれたから。
お わ り
* * *
いつもどおり☆3以外の評価も歓迎しています。
気軽に☆評価をお願いします~。
ぬいぐるみが教えてくれたこと 天城らん @amagi_ran
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます