Flower in Wonderland
る。
不思議の国のハナ
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男性
▶︎女性
その他
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「ハナって……まあいいわ」
――AIオススメ診断 >> あなたに最も近いものを選んでください
たくさんの人から尽くされたい
自分を蔑ろにする人達を見返したい
▶︎自分の幸せを見つけたい
幸せな今を永遠に続けたい
登場人物の設定 ▶︎する しない
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「……」
幾つかの操作を終え、VRゴーグルをセットした。
流れ出した軽快なオーケストラ・ミュージックと共に舞台の幕が上がるように景色が変わり、私はそこにいた。お屋敷を背後にした庭の木陰で、隣に女性が腰掛けている。そして下を向くと自分は膝丈の青いワンピースに白いエプロンドレスをつけていた。
チラリと目の端に映る、ウサギ耳――を付けた、男性の姿。
「遅刻だ、遅刻」と懐中時計を確認して駆け出す。
「あっ……」
私が追いかけて、追いかけてひゅうんとウサギの巣の穴へ飛び込んだ。
トンネルのようにどこまでも深い穴を落ちていく、落ちていく浮遊感の先にぐるりと大小扉の並ぶ大広間。“EAT ME”とメモが置かれたクッキー つまりここは
「不思議の国のアリス、ね……」
ーーーーーー
ーーーー
かちゃりと扉を開けて眩い光に思わず目を細めた。変わらず、自分が入っていたものと同じ小型の脱出ポッドのような機体が数台並んでいる。軽くつま先を立てて伸びをした。
「どうだった?」
ウサギ耳を付けていない男性が先に終わって待っていたようで、声かけられる。
「どうってうーん……ゲームのような感じね。読書体験とはまた違うかしら」
ひと昔前に登場した『夢小説』に着想を得た、“物語に入り込む次世代の読書”と銘打つ開発のモニター協力ということだった。自分のみならず、データを取り込めば王子様から悪役まで再構築され、まるで明晰夢のように思い通りの世界が実現する。
『
「自己投影に満足が得られたらいいけど、
「試作だし、著作権の関係じゃないか。展望としてはライトノベル層がターゲットらしい。サンプルに白雪姫、シンデレラ、ピーターパンに……一応ハッピーエンドものが選ばれてるな。お前は何だった?」
「んー……それも的を得ていたか微妙だし」
選択肢を推測されたくなくてぼやかす。確か……
“どの道を選んだらいいかしら”
“どこに行きたいかによるだろう”
“それが分からないの”
“それならどれを選んでも同じさ。歩いて行けばどこかに辿り着く”
――そんなチェシャ猫との会話は思い出された。
「コラボするのはいいかもね。やっぱり本屋さんは必要って再確認できたわ……偶然ページを捲ったところの一文に惹かれたり、自分の体感で選ぶのが楽しいもの」
「皮肉屋だな」彼は笑う。「どちらかじゃなくて、どちらもだっていいだろ。どこに続くか分からないし、案外同じところに辿り着くかもしれないぜ」
「そうかもね。でもハッピーエンドは間に合っているわ。――うさぎさん、捕まえた」
きゅ、と隣にある手を握る。
「確かに。ここがネバーランドかも」
手を繋いでスマートフォンを片手に見慣れない道を歩く。どこに行きたいかじゃなくて、誰と行きたいかなら答えられたかも、と思いながら。
END.
Flower in Wonderland る。 @RU-K
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