第66話 秋の章(22)
「そ、そうだよね。ごめんね。プライベートな時間を邪魔して」
「いや。いいんだ。そうじゃなくて……」
青島くんは、言いにくそうに言葉を詰まらせる。手元の飲み物をゴクゴクと音を立てて勢いよく飲むと、再び口を開いた。
「俺の言い方が悪かったな。白野が泣いてたから、心配になった。だから、その涙の理由を教えてくれ」
「え?」
青島くん持ち前のストレートすぎる言葉に、私は思わず顔を上げた。
「あ、いや。ほんとに無理に聞くつもりは無いんだ。でもやっぱり、その……気になるんだ。俺なんかじゃ解決出来ないかもしれないけど、話してみないか? 何があった? まさか、誰かに何かされたのか?」
気遣わしげな視線を向けてくる青島くんに、私はフルフルと頭を振った。
「……あのね。家にはすぐに帰ったの。何も無かったから安心して」
「そうか。良かった。でもじゃあ、なんでまだ制服のままこんなところを彷徨いてたんだ?」
「それは……家でちょっとあって……」
「親と喧嘩か?」
青島くんは、閃いたとばかりに聞いてきた。
「どんな事で喧嘩したのか知らないけど、家を飛び出すなんて結構な喧嘩だな。俺もたまに親と喧嘩するから、家を飛び出したくなる気持ちは分かるけど。でも、白野は女の子なんだ。今日は、偶然俺がいたから良いようなものの、滅多やたらとこんな時間にこんな所、彷徨くもんじゃないぞ」
青島くんが心配してくれているのは分かる。だが、違うのだ。話の方向が違っている事に気がついた私は、小さく手を上げて青島くんの注意をひいた。
「あ、あのね。別に親と喧嘩したわけじゃ……」
「え? あ? そうなのか? 俺はてっきり……」
明後日の方へ話を向けていた事に気がついた青島くんは、バツが悪そうに頭を掻いた。
自分でもなぜ部屋を飛び出してきてしまったのか分からない。正直、混乱もしているし、分らないことだらけだ。でも、フリューゲルと一緒の空間にいることが酷く苦しかったような気がする。
そんな事を思い、ふうっと小さく息を吐き出すと、それが聞こえたのか、青島くんが遠慮がちに声をかけてきた。
「白野? 大丈夫か?」
「……ちょっとね……混乱しちゃって……」
「やっぱり、俺が聞いちゃだめなことか?」
「ダメっていうわけじゃないんだけど……私自身が混乱していて、上手く話せないの」
「上手く話そうとなんかしなくてもいい。話せることがあるなら、何でも言ってみ。言葉にしたら、その混乱も解決するかもしれないし」
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