第55話 秋の章(11)
「本当に送らなくて大丈夫か?」
「うん。家、そんなに遠くないし」
「そっか。分かった。じゃ、もし何かあったらすぐに連絡しろよ。俺の連絡先知ってるよな?」
そう言うと、青島くんはポケットからスマホを取り出した。
「うん。前に教えてもらったから知ってる。もう、心配しすぎだよ。大丈夫。でも、もし何かあったら連絡するね」
心配する彼を宥めつつ、私は別れの挨拶がてら、彼に手を振る。青島くんもそれに応えるように軽く手をあげた。いつまでも彼とこうしていたいが、そういうわけにもいかない。私は思い切って、彼に背を向けて歩き出した。
しばらく歩くと、フリューゲルののんびりとした嘆きが隣から聞こえてきた。
「あ~あ。焼き芋美味しそうだったなぁ。アーラだけ、ズルいよ」
そんなことを言うフリューゲルに、私は少し呆れる。
「フリューゲル。そんな事を言うなんて、あなたもいつの間にか下界の人ね。
「それは、
唇をちょっと突き出して、そんなことを言ってくるフリューゲルの姿は、まるで、学校の男の子たちのようで、ちょっと可笑しい。
「ふふ。あなた、本当に下界に感化されてるのね。そんなことで、
「それは、お互い様だよ。と言うか、むしろ、僕はアーラの方が心配だけどね。
「もちろん。私は
私たちは軽口を叩きながら家へと向かう。
こんなことも
私たちは、二人とも確実に下界に感化されている。果たしてそれは良いことなのだろうか。
「ただいま〜」
玄関で帰ったことを告げるが、中にいるはずのお母さんからの返事がない。いつもならば、のんびりと間伸びした声が迎えてくれるのだが。
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