第31話 たまには飲み屋に

 諸々のことがあってから1週間ほどが経過した。

 今のところ、朝の開店のみで、緊急の依頼は来ていない。


 そんな時に、ハッと気づいた。

 休日を設けていない事に。


 ということで、週に1日は休日として、みんなが自由に過ごせる日を作った。

 イリアには家事などもありますし……と言われたが、1日くらいやらなくても大丈夫と押し切った。

 その日は、俺が浄化をしまくれば、ほとんどの家事は済むからね。

 食事は、アイギスさんとイリアにお金を渡して、ゆっくりしてもらうことなった。 


 そして、休日となり、みんな思い思いの時間を過ごす事になった。

 アイギスさん、イリア、テマリは、買い物をしたり、町を回ってくるようだ。

 俺は、散歩や釣りに行ったり、ゆっくり過ごした後、たまには酒場に飲みに行くことにした。



 ゆっくり過ごした俺は、飲みに行ってくると書き置きして、酒場へとむかった。


 酒場の中は、かなり広く、何組もの冒険者風の人達や町の人達が飲んでいたが、中央の壁側にはステージがあった。

 俺は、カウンターに座り、マスターにオススメを聞いてみた。


「オススメは、ピザとハイボールだな」


「え? あるんですか!?」


「あるよ。昔、勇者様がウチの先祖に教えてくれたみたいでな。ピザとハイボールはウチが元祖だな」


「おぉ! じゃあ、それをお願いします」


「はいよ」


 ピザは石窯で焼いており、焼き立てが出てきた。

 出てきたのは、マルゲリータだった。

 ハイボールも癖がなく飲みやすい。


 うまーい! ハイボールも進んじゃう〜! 

 あ、今度バジルの葉をマスターに売ろうかな。


 久しぶりのピザとハイボールを楽しんでいると、店内がザワザワし出した。


「ん? マスター何かあるんですか?」


「おう。ウチの売りの1つなんだが、音楽ってやつを提供してるのさ」


「おー、ジャズバーみたいな感じかな」


「お! お客さん詳しそうだな。まぁウチはジャズだけって訳じゃなく、色んな歌と演奏を提供してる感じだな」


「へぇ、言ってみれば音楽酒場……ミュージックバーってやつですね」


「みゅーじっくってなんだ?」


「えっと、音楽って意味だったと思います」


「お、そういうことならいいじゃねーか! ウチはこれからミュージックバーって言わせてもらうよ!」


「あ、はい」


 何だが言語が不思議だな。

 これも過去の勇者の影響なんだろうけど。

 もしかしたら、翻訳さんが不思議な変換してるのかもだけどな。

 そもそも翻訳さんってなんだよって話だけど、こっちの世界に来た時から言語だけは分かっていたからな。

 俺には、よく分からんな。


 それにしてもジャズバーってのは、どっかあるのか?

 シガーバーとかは、さすがにないか。

 しかし、よくジャズってのを勇者が知っていたな……吹奏楽とか、そういう趣味の人だったのかもな。



「それにしても、アンタ詳しいな。音楽とかの専門家なのか?」


「いえ。えっと、自分錬金術師でして、色々な本を読んでいたので、たまたま知っていたんですよ」


「あぁ! 最近この町にきた錬金術師様ってアンタのことだったのか! ならウチの音楽……みゅーじっくも楽しんで行ってくれ!」


 マスターがそう言うと、ステージに演奏者の男性が数人と、女性が1人上がってきた。

 楽器は、ギターとマラカスとタンバリンみたいなのだな。


 おぉ!

 演奏も凄いけど、歌声も凄いな!

 しかも、美人さんで20代くらいかな。

 スタイルもとても良い。

 そんな女性が、マリリンモン○ーみたいな真っ白なドレスで歌っている。

 そりゃこれだけの人がこの店にくるのも分かるな。


 何曲かの歌と演奏が終わった後、奏者達と歌姫がカウンターに来た。


「お疲れ。今日もみんな良かったぞ。さ、飲んでくれ」


 各々がマスターにお礼を言って、飲み食いを始めた。


「ま“すだぁ〜……」


「レイラ、まーた喉やっちまったんか」


 頷くレイラと呼ばれた女性。


「こうも毎日ポーション飲んでたら、今日も稼ぎなしになっちまうぞ?」


 頷き俯くレイラさん。


「はぁ……あ! そうだ錬金術師様よ。なんか良い薬ないか?」


 そうマスターが俺に言うと、バッと顔を上げ俺を見るレイラさん。


「く、薬ですか……」


「おう。なんか良いのねぇか? 長いことウチの稼ぎに貢献してくれてるレイラだがよ。こいつは一向に金が貯まらんのよ。毎回、喉やっちまってな……」


 潤んだ瞳で俺を見つめながら頷くレイラさん。


「うーん……レイラさん、ハチミツにアレルギーってあります?」


 首を傾げるレイラさん。

 ハチミツは喉に良いって聞いたことあるんだけどな。

 あとは……カモミールも調べたら、喉に良いみたいなこと書いてあった気がする。


「うーん……アレルギーがなければ、カリンって果物をハチミツ漬けにして食べても良いですし、カモミールのハーブティーにハチミツを加えても良いと思うんですけど……カリンなんて無いですよね?」


「あるよ」


「あるんですか! なら、それを薄く切ってハチミツで漬けてみてください。カモミールは家で育ててるので、明日なら持って来れると思います。もちろんポーションより安いですよ」


「お! それならいいな! 良かったなレイラ」


 何度も頷くレイラさん。


「でも、アレルギーがあったら、余計に酷いことになるのですが……」


「大丈夫だろ。レイラはミードが大好きだからな!」


 ミードって蜂蜜酒か。

 なら、ハチミツは大丈夫かな?


「あ、歌う前にはお酒は控えた方が良かったと思います」


「だってよレイラ」


 肩をガクッと落とすレイラさん。

 余程お酒が好きなのかもしれない。


「ま、まぁ、歌う前はお酒の代わりに、ハーブティーとカリンのハチミツ漬けで我慢してください」


 こうして、この日は、帰宅した。


 次の日になり、俺は、カモミールを収穫し乾燥させたものを持ってマスターのもとへやってきた。


 マスターも、あれから、カリンのハチミツ漬けを作ってくれたようで、良い感じの物が出来がっていた。

 カモミールのハーブティーとカリンのハチミツ漬けをマスターに準備してもらって、歌う前のレイラさんに試してもらうように言って、俺は帰宅した。



 後日、マスターとレイラさんが俺のうちに訪ねてきて、お礼を言われた。

 あれから売上も好調で、レイラさんの喉の調子も良くなり、歌声も一段と良くなったと。

 その日は、お店に招待され、俺、アイギスさん、イリア、テマリは、マスターの作るピザや料理、お酒を楽しみ、レイラさんの歌声にも聴き入った。

 こうして、カモミールのハーブティーを定期的にレイラさんが買ってくれるようになり、俺達も、ミュージックバーに定期的に行くようになった。



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