第44話
……。
……追い返すことができたのか? あの、魔王波旬パーピマンを。
「弥勒……いえ、弥勒菩薩……マイトレーア。よくやってくれました」
観世音菩薩様……。
「あ、ありがとうございます。奴を仕留めることはできませんでしたが、追い返すことはできた様です。申し訳ございません」
観世音菩薩は慈悲深い目で話してくれた。
「何を謝ることがあります? 追い返すことができただけでも充分です。本当によくやってくれました」
「奴は今後、どうなるのでしょう?」
観音様はそれに関しては何も語らずこう言ってくれた。
「それはあなたが現代に行けばわかることです」
「それともう少しだけ……お釈迦さまのもとで教えを請いなさい。仏法のおさらいをしてから現代にタイムリープするのですよ」
「わ、わかりました」
「それでは、マイトレーア。私は現代で待っております。また会える時を楽しみにしておりますよ」
そうして観音様は去っていった。
「弥勒菩薩……僕は本物の弥勒菩薩だったんだな……」
ーーそれと。
ーーチカも現代で待っていますよ。
!!
「チカも現代で待っているって!? 観音様! それはどういうーー」
……。
「あ、行ってしまわれた……」
僕はしばらく呆けたように放心していたが、やがて気を入れ直し、体を動かす。
……さてと、お釈迦さまに教えでも請うかな。
僕は大変なことをしたんだなぁと感慨深い想いになり、そして、仏陀のもとに向かうのだった。
ーー
「私はいつも言っているね……この世に繋がっていないものはない……あるゆるものは全てが繋がっていると……」
全ての弟子が仏陀の話を聞いていた。
「物事の原因を解き明かせば、あらゆる苦しみは止めることができる……そう、原因さえ変えることができれば結果は必ず変わるものなのだ……」
「物事は悪い方だけに変わるとは限りません。良い方に変わることもあります……だから、善因を積みなさい。悪因を作ってはいけないよ」
「「はい、仏陀!」」
「そして、あらゆる苦しみは煩悩から生じる。欲望の火を消すことができれば……あらゆる苦しみは回避できる」
そして、お釈迦さまは、まだまだ語り続ける。
「人は結局自分自身と戦っているのだよ……つまり……自分の心象風景と争っているに過ぎないのだ」
「マイトレーヤ……こちらに」
「仏陀がお呼びです。マイトレーヤ」
僕は少しだけ緊張した面持ちで仏陀に近づいた。
「次に悟るのは君だ。友よ」
「は、はい!」
「友よ、チカはどこに行ったのだ? あいつにもぜひ労いの言葉を贈りたいのだが」
先に……現代に、こんなことは言えないな。
「観音様と共にまた修行の旅へと出かけられました」
「そうか、残念なことですね。しかし悔やむことはない。縁があれば……それが続く限り、また出会うことができるのだから」
「はい」
「これからのことをよろしく頼む。友よ」
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