らいとにんぐあっくしゅ

 保育園のお迎え時。


 いつものように、タタタっと駆け寄ってきた次男。


「ぼくぶちちゅくた」

「ううん??」

「ぶーちーちゅくたのー」

「う、うん。うん? 何作ったって?」

「ぶーちー」

「ぶち?」

「うんっ!」


 誇らしげだが、全くわからない。


 ぶち?

 ブチ?

 ぶ……?


 全然思い当たるものがない。先生に声をかけて、何を言ってるか教えてもらった方がいいだろうか……と思っていると、次男、自分のリュックをゴソゴソやって、作ったらしい何かを取り出し、意気揚々と振り上げた。


 黄色の折り紙を長方形に折り、そこに黒の折り紙を同じく長方形に折ったものをつなげた長細いもの。


「らいとにんぐあっくしゅ!」

「ライトニング アックス!!」


 ようやく理解。


『ぶち』=『武器』!


 まあ、どう見ても剣であっても、斧ではないが。


 ただ、ライトニング、というだけあって、刀身は黄色だ。刀身と言っていいかはわからないけど。


 どうやら次男、そのライトニングアックスを随分気に入ったようで、帰り途にテクテク歩く母の横、


「うをぉぉぉ! らいとにんぐーーあっくしゅ!」


と叫びながら、振り回し走っていく。


 まあ、その折り紙一つでそれだけ楽しめるって良いことだよね。


 と思いつつ歩いていくと、途中で道路工事の交通整理の方を見かけた。


 黒の持ち手に赤く光る棒。


 次男が興味を示し、


「あれなにー?」


と言うので


「あれで、車とかに、こっち来てくださーい、あっち行ってくださーいってやるんだよ。次男のライトニングアックスと一緒で光ってるね。色違うけど」


と教えてあげると、次男、自分のライトニングアックスを見おろした。


「まあ、ぼくのらいとにんぐあっくしゅ、ひからないけどね」


……光らないの!? ライトニング、って言ってて、黄色にまでしてるのに!?


 よくわからないこだわり。


 ライトニングアックスブームは、それから三日ほど続いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る