第16話

 食事会の後、アパートに帰って早々にダブルベッドの角に横になった。

 先程の成の勤め先のオーナーに招かれた食事会を思い出した。


 待ち合わせの店でオーナーの早先生に会った時の成の顔を見てビックリした。安堵感っていうのか、表現が難しいが親しみは最大に伝わってきた。

 もっともっとビックリしたのは、早先生の容姿だ。

 俺も芸能界にいるが、なかなかお目にかかれないトップクラスの最上級だ、成も最上級だが、早先生はクラスの違う最上級だ。

 警戒音が心の中で響き初めていた。


 冷静に振る舞わないと墓穴を掘りそうになった。俺から離れたいのは、この男のせいかとか色々考えてしまう。

 落ち着いて、自分に自信を持ってと言い聞かせていた。

 田舎の町医者を想像して、俺を見せつけたい気持ちもあり意気揚々と招かれたが、なにかがズレた。


 成はだいぶ慕っている。

 まずいのは分かるが、……どうしたら良いのかわからない。

 ピアノをキーワードにこの2人はもっと親身になりそうだ。結局は俺が2人の仲を縮めるキューピッドだ。

 あの場は早く成を連れて帰りたくなった。こんな気持ちはこれまで味わった事がない。


 ずっと昔を思い出すと姉の愛と成の取り合いをした事があるが姉には負ける気がしなかった。


 成の新しい世界が眩しい、似た物同士が集まるってこう言う事なのか?


 早先生が独身って言っていた。まずい。

 出会う必要のある人間には、必ず出会うって言っていた。

 俺もそう思うが、この3人は出会う必要あったのだろうか?


 色々考えていたら、だいぶ飲んだアルコールのせいか寝てしまった。

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