ドルヲタサブロー2

@nakaune

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あれからどれぐらい経ったのだろう。

推しのななちゃんが卒業し社内の憧れの子に彼氏が居るとわかり気に入っていたアルトサックスの子は海外に留学してしまった。

世の中はコロナが蔓延して外出もままならない日々だった。

失意のなか呆然と生活をしていたように思う。


最後の舞台の後、軒並みイベントは中止になってしまいななちゃんとの最後の握手も卒業公演も出来ないままななちゃんは卒業してしまった。

結局さよならを言うこともできなかった。


その日はひさしぶりにヲタ仲間のイチローさんの部屋に行った。

壁一面に貼られていたななちゃんのポスターはすべて取り払われていた。

こんな殺風景な部屋だったんだと思った。


「何もないですね。」

「まさに私の気持ちそのものだね。」と静かに笑った。

卒業発表後何日かして訪れて以来だった。

その時は、肩を落としながらグッズを段ボールにしまっていたことを思い出す。

「段ボールはどうしたんですか?」

「あるよ。さすがに捨てられないから。貸倉庫を借りた。」

「そうですか。相当ありましたからね。」


酎ハイを冷蔵庫から出してくれた。

グレープフルーツが苦かった。

「ほかの子は推さないんですか。」

「うーん、実は気になってる子がいる。」とちょっと陽気になった。

「誰です?」

その子は去年グループに加入したまだ中学生のかわいらしい子だった。

実は僕もその子はいいなと思って見ていた。

「いいですよね。僕もいいなと思ってました。」

「でも推すかどうかはわからないよ。様子見ってとこかな。」

「ですよね。ななちゃんの後すぐって気持ちが整理つかないですよね。」

「そうだね。」

ななちゃんへの思いが強すぎたからかもしれない。


ヲタ卒をしようかとも考えたけど、急に離れられなくてななちゃんのいるグループを

今もちょっと遠くから眺めている。

イチローさんも同じような感じだった。

「最近オルトやキウイに会った?」

オルトとキウイは、同じヲタ仲間だ。

ただ二人の推しは、選抜メンバーで大活躍している。

「会ってないですね。彼らも気を使ってるんでしょう。」

「久しぶりに会いますか。」

「そうですね。」

ふたりに通知を入れた。

今度会うことになった。

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