合鍵にキスをして
冲田
第1話
私は、その新しい鍵にキスをした。
初めて、彼がいない時間に彼の部屋に入るのだから、鍵穴に鍵を差し込むこの瞬間、とてもドキドキしている。ひとつ、深呼吸をしてアパートのドアを開けた。
壁をまさぐって、真っ暗な部屋の電気をつけた。オフィスのデスクと同じように整頓された部屋に、彼らしさを感じる。
さて。と、私は持ってきたスーパーの袋を、一人暮らしのワンルームらしい小さなキッチンに置いて、腕まくりをした。
彼が帰ってくるまでに夕飯の用意を終わらせなきゃ。ふふ。きっとびっくりするだろうな。いつも忙しくて自炊なんてできないだろうから、体のためにもたまには手料理を食べないとね。
得意の筑前煮や彼が好きなハンバーグ、それからコーンスープも。彼の喜ぶ顔を想像すると自然と頬が緩んでしまう。
食事を作り終わってふと時計を見ると、私はもう帰らないといけない時間だった。急いで後片付けをして、私は彼の部屋を出た。鍵を閉めて、もう一度、その合鍵にキスをする。
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