幕間エピソードIII「小野さんと超能力との出会い」
俺と小野さんが出会ったのは高校生の時だ。
電車を降りて改札を抜けると小野さんはいたのだが、駅構内の柱の前で死んだように倒れているホームレスかもしれない男に向けて小野さんは右手をピンと伸ばしていた。
普通であれば関わるのはよそうとそそくさと走り去りくなるような場面だが俺は違った。
俺が普通の人間ではないから?
至って俺は真面目な人間だが、普通ではないのは合っている。俺は超能力者なんだから。
だから俺は小野さんに共鳴したんだ。
それには小野さんも直ぐに応えてくれた。
「なんだお前、俺のやっていることが理解できるのか?」と。
そこで初めて俺は超能力の存在を知ることになる。
誰が超能力者なのか分かるのも立派な能力だ、と小野さんは俺には超能力を観測する力があると教えてくれた。
超能力を持っている人が近くにいたり、実際に力を使用した時にピコンとレーダーが反応するような能力だ。
だから俺はあの時、小野さんをただの変人だとは思えなかったんだ。むしろやっと巡り会えた同胞という気さえしたかもしれない。
この観測能力を生かして俺は各地に散らばっているであろう超能力者達をできる限り見つけ出してみようということになった。
そのおかげで今、現在の人数は俺を含めて四人となっている。小野さんは亡くなってしまったが……あいつも入れたら五人か。
そのおかげとは言うものの四、五年かけてこの人数だと少ないような気もしている。日本国内だけでも約一億人の人がいるというのに。
それだけ貴重な存在というよりは、はっきり自覚している人や超能力が開花しようとしている人は極僅かであると言う方が当たっている気がする。
小野さんもあれこれ変だなと思って完全に自覚するまでに十年くらいの月日がかかったらしい。
そんなの関係なく見極めることができたのならもっと増えているんじゃないかな。残念ながらそこまで俺の能力は万能ではない。
そう考えれば俺の生活圏内だけで小野さんと巡り会い、のちに二人も見つけることができたのは幸運なのかもしれない。宇佐美さんは小中学生の同期だし。
そこまではトントン拍子みたいにわりと出会うことができたわけだが、小野さんがいなくると同時に停滞してしまった。
大学に進学してもそこでは反応はなし。もう俺にそんな能力があることなんて忘れてもいいくらいだった。
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