第25話 合錠岬《プロジェクトクローズ》
岬にタクシーを飛ばすと、久美子が既に到着していた。
この事件になんらかの責任を感じているんだろうな。
だから来たのだと思う。
「彼女は?」
「誓いの鎖の所にいるわ」
誓いの鎖はステンレスの鎖で、カップルが取り付けた鍵がいくつもぶら下がっている。
散歩コースを歩いていく。
「近寄らないで」
「まだ若いんだから、死ぬなんて考えるなよ」
「あなた、死ぬ勇気が出ないのよね。死ぬのは諦めて生きてみたら」
「久美子、なんか説得させる言葉はないのかよ。プログラム的にはと言って」
「プログラム的には
久美子がキーホルダーを見せる。
パトカーのサイレンが聞こえてきた。
そして、
「
「
「逮捕して下さい」
「おい、お前ら。このお嬢さんが自首するそうだ。署まで送ってやれ」
「刑事さん」
きっと始末書ものだぞ。
「行こう」
「ええ、打ち上げにレストランのフルコースがあるのよね」
そうだった。
そして、バレンタインデー。
いつものスーツにいつものコートを着て、レストランで久美子を待った。
久美子はドレスを着て現れた。
美しいな。
手にはリボンでラッピングされたハート型の箱をもっている。
「これ」
「くれるのかい」
「義理よ義理。勘違いしないで」
「そういうことにしておくよ」
「会社大変ね。賄賂で逮捕者が出そうなのよね」
「仕方ないさ。それだけの事をしたんだから」
会社のことは心配してない。
賄賂で逮捕者が出て会社が潰れたためしはまずないからだ。
弊害といえば、イメージが多少悪くなって、会社の名前を出すのが恥ずかしくなるぐらいか。
「ホワイトデー、楽しみにしているわ」
「借りがいっぱいできたからな。返さないといけないか。とほほ、また財布が軽くなる」
久美子におごるのは嫌じゃない自分がいる。
事件はもうこりごりだが。
でもきっと何か起こるような気がしている。
こういう時の勘は当たる。
「心配事?」
「また、コンピューターのことで分からない事があったら、助けてくれるか。それと事件が起きた時」
「ええ、喜んで」
「乾杯しよう」
「ええ」
「くそったれなプログラムと事件に乾杯」
「乾杯」
ワイングラスをチリンと当てた。
ワインをぐっと呷った。
久美子は今日は帰りたくないのとか言い出さないかな。
ないか。
「そうそう、
「彼女も持ち直したようだな」
「贖罪のためにも作品を作り続けるって」
「生きる希望があるならいいさ。罪を償ってお店がもてるようになったらいいな」
「ええ」
2月14日でまだ寒いが、春の訪れを感じた。
僕の春はいつになったら来るのだろう。
コースが終わったのでデザートのついでにチョコレートを食べる事にした。
包みを開けチョコを見ると、ハート型の中央に、丸に車線『Ø』がピンクのチョコで書いてある。
どんな意味が。
ゼロだよな。
プログラマーはゼロの丸に斜線を入れる。
アルファベットのオーと区別するためだ
そう聞いた。
ええともしかして、テニスのゼロか。
loveって意味だったりして。
チョコを食べている僕を見て、久美子は何も言わない。
でもきっとそうだ。
そう思いたい。
義理って意味で愛情ゼロじゃないよな。
それだったら少し泣けてくる。
真相を聞くのが怖いな。
心の奥にloveって意味だと記憶しておこう。
あとがき《EOF》
コンテスト用に書きましたが、10万字は遠く、打ち切りエンドです。
反省点は密室の謎解きは前半の山に持っていくべきでした。
後半は犯人捜し。
こんな構成なら10万字書けて、完走出来たでしょう。
それと連続殺人の方が良かったかも知れません。
キャラがいまいちだったのも反省点です。
次のアルファポリスのコンテストには1年あると思うので、ミステリーの次回作はゆっくり考えたいと思います。
プログラマー探偵 路軸《ろじく》久美子《くみこ》 喰寝丸太 @455834
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