まず、冒頭から、残酷シーンです。
血。よだれ。尿。
「ひぃぃぃ!」
これから死を迎える罪人の、轡がはずれ、悲鳴がもれる。
主人公、浅右衛門は、かまわない。
ざっ!
白刃がきらめき、すさまじい太刀筋で、罪人を一刀両断……。
とても残酷です。
そして、迫力です。時代劇、かくあるべし。
血のにおいが、むっと鼻をつくような、地獄絵図。
主人公は、罪人の首を切るお役目。
そのような日々を重ねていれば、精神が正常でなくなるのは必定。
常にひそみ、いつ爆発するかわからない狂気をはらみながら、主人公は歩きます。
吉原の美しい花魁、この主人公にとっぷり惚れこんだヒロインが、ほほ……、と凄惨な血の宴でも妖艶に笑い、物語に華をそえます。
ムフフもあるよ。(←いきなり言い方。)
生ぬるい、仲良しこよしの物語なんかお呼びじゃない。手に汗にぎる、迫力の殺陣、狂気をにじませる、ものすごく強い主人公、ハラハラする展開の物語が読みたい!
そのような読者さま、この話は、期待を裏切りませんよ!
おすすめいたします。
江戸時代に処刑の首斬り役を務めた山田浅右衛門。幕府から直々に仕事を与えられるも、その身分はあくまで浪人。そして太平の世でありながら、日常的に人を斬って暮らしていた。この山田浅右衛門をどう調理するかは書く人によって様々だが、本作の山田浅右衛門は平和な世に似つかわしくない異質な人物として描かれる。
人並み外れた剣の腕を持ちながらも、やっていることは無抵抗な罪人の処刑。当然鬱屈は溜まるばかり。目上の役人のから注意を平然と跳ね除け、遊郭の座敷では何の前触れもなしに突然刀を抜くという、とにかく危険な男だ。だがこの触れれば切れるような危なっかしい態度が、他にはない凄みのある魅力を生むのだ。
そしてこの危険人物に与えられたのが、暗殺の密命。それもターゲットは徳川家にとっての超重要人物! 一介の浪人には重すぎる密命、しかも浅右衛門はこうした謀略には向いていないように見える……だが、彼はあまりに殺伐としたやり方で下準備をクリアする。あとはターゲット――罪人ではなく歴史に名を残す人物――の首を獲るだけ! 時代にそぐわぬこの男の行き着く先やいかに?
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎 憲)