第53話 社保脱退が大人気!
中酷強酸党当局が国民全員に社会保険を9月1日に義務化する規則を発令した。それを知った人民は、社会保険からの脱退手続きに長蛇の列を作った。8月1日、最高人民法が社会保険に加入しないという約束は労使の合意であっても労働者の承諾であっても無効で違法になるというものだった。強酸党の表面上は、人民のためにと強制的に社会保険に加入させようとしたものだが、人民はそうとは受け取らなかった。小さな会社の経営者は、ただでさえ経営が厳しいのに従業員の社会保険迄負担できない、廃業だと嘆き、不安定な労働者は薄給に拍車を掛けられると不満を募らせていた。今の生活がままならないのに老後のことなど考えられないと嘆く。
バスの中である事が起きていた。優遇された一部の年金時給者の会話が発端だった。老人たちは年金の受給額を話していた。そこにいた老人は、多かれ少なかれ月額日本円にして14万円を受け取っていた。それを聞いていた若者が声を上げた。「朝から晩まで働いて月給6万円少しなのに何もしない老人が14万円も貰っていると激怒した。農村部の話ではない。若者からすれば怒りが爆発するのも理解できる。その老人たちも若い時にはそれだけの社会保険料を支払っていての結果だ。しかし、若者は明日会社が解散しているかも知れないという恐怖の中で生きている。職に在りついても足元を見られ、過酷な労働に低賃金の苦境に立たされているのも現実だ。
三十代でさえ、食べ物と飲み物以外は買わなくなった。電化製品など買う余裕はない。旅行している者は大概が強酸党との関りが深いか、労働者からの搾取で得た金で楽しんでいる。だから、ひと昔の爆買いとは縁がない。そこには「見栄・面子」を保つための旅行実績だ。よって、買い物などしない。ストレス発散でやってくるから各地で問題を引き起こす図式だ。
社会保険料を支払わないのではなく、支払えないのだ。仕事が安定しないからだ。日本も似たようなものだ。何だかんだと税金を取られ、間もなく50%の背中が見えてきている。
中酷では、正社員など夢物語。臨時雇いかアルバイトパートに在りつければ幸運だという現実も脱退理由に挙がっている。そこには分配金の不公平さが火に油を注いでいる。公務員や体制内の役人は優遇されている。一般労働者は半分程が目安だ。農民の悲惨さは1/100で別格だ。ここでの話は、都市部の話だ。
人民からは、自分たちが支払った社会保険料は、一部の優遇された者に流れるだけで自分たちには戻ってこない。ならば、今を生きたいという本音も見えてくる。広場でダンスを踊ったり、海外旅行に行ける者たちの肥しになりたくないというものだ。その裏付けが2023年の支給データの公表だ。公務関連が年約180万円、企業の退職者が年約60万円。ここにも裏があり、公務員は月々の社会保険料を払わなくていいルールがり、勤続年数で支払われている。一般人からの嘆きも理解できる。また、この構造が年金財源を窮地に追い込んでいるのも事実だ。貰う側の決めたルールは変わることはない。日本で言う裏金問題も同じだ。
若い世代は、自分たちは家族を養うために必死で働いているのに高齢者は広場でダンスを踊ったり、海外旅行をしている。
秀欣平は中酷の貧困は終わったと宣言し、海外に金を注ぎ込んでいる。若者たちは、こんな金の使いかとをしていたら、将来、受け取れるものも受け取れないと嘆いている。若者層の社会保険料未払いは、政府機関の発表では52.3%だったとされている。この危機感からの社会保険料の支払い義務化だ。さらに若者からすれば、今払っている社会保険料は高齢者の年金に当てられ、枯渇しているだけ。若者が働けない現状で自分たちの将来に希望が持てるはずもない。
一人っ子政策以前の世代が一斉に年金受給者になる。そこに少子化と労働環境の悪化が追い打ちを掛ける。その先には破綻しか見えない地獄絵図だ。日本も中酷も自らの国を立て直そうと言う発想さえできない国に利権争いで投資している場合ではない。足元が崩れ落ちていることを真摯に捉え考えるべきだ。発展途上国への投資は、焼け石に水でしかない。今まで投資してきても状況は何も変わっていない。ユニセフも活動を続けても対象者が減ることはない。根本的に差し伸べる手が間違っているとは言えないだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます