第46話 秀欣平の失脚間近か

 秀欣平が主席になってから初めてBRICSの首脳会議への参加を見送った。張遊侠による秀欣平派の将軍の残党狩りが始まり、新たな集団指導体制の組み直しが顕わになった。プチンと会談した鄭哲章が後継候補の一番手だ。

 BRICSはブラジル、ロシア、インド、中酷、南アフリカという新興国の連携枠組みだが経済規模や国際影響力の面では中酷が圧倒的な存在感を持っている。秀欣平の代わりに参加したのは利教首相だった。本来なら秀欣平が表に出したくない人物だ。このことからも党内での秀欣平の権力が大きく揺らいでいることが垣間見える。

 中酷人民解放軍の幹部人事も秀欣平がトップを務める軍最高指導機関、中央軍事委員会メンバーの苗苛委員は重大な規律違反で職務停止の状態であり、制服組ナンバー2の佳瑛東副主席も2025年3月を最後に消息を絶っている。

 本来なら面子重視の秀欣平の花舞台となるBRICSの参加より大事な国内要件とは何なのか?6月には軍委拡大会議で張遊侠に軍権を譲渡され、軍、経済、外交、警察、人事など剥奪された。張遊侠は秀欣平派の将軍が39人、同じ日に解任されている。その中には海軍一号の故宙明、中部戦区一号の韓英国、南部戦区一号の汪文全の三人の上将も含まれていた。さらに情報支援部隊政治委員の李意、北部戦区政治委員の鄭公、元中部戦区の司令官・王匡も拘束されているとみられる。

 中酷強酸党内部が如何にごついているかは噂ではなく、更迭・拘束の数の多さを見れば明らかだ。

 2025年6月、中央軍事委員会拡大会議で張遊侠が秀欣平が整備した中央集権型の五大戦区を廃止し、七軍区戦区に戻すことで各軍の権限を強化させている。さらに総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部も再見し、軍の作戦指導体系を再構築している。

 強酸党の重鎮の温家法や胡錦棟は交渉の中で秀欣平の面子と夫人・家族の身の安全の保障と秀欣平派の人材を粛清しないことを条件に退陣合意を仕向けている。

 温家法や胡錦棟は後継者に旺洋を総書記に据えて、故春華を国務院総理にする腹つもりだったが、旺洋が総書記になるならば中央軍事委員会主席の座もつけるように条件を出してきた。

 中酷では国家主席は外交の儀礼の場に出る名誉職であり、重要なのは国家を指導する強酸党のトップである総書記の座と権力の担保となる武力を操れる中央軍事委員会主席の座が重要になる。

 温家法や胡錦棟の案に張遊侠が異論を唱えた。秀欣平派を完全に粛清しなければ危険であり、自分自身を中央軍事委員の主席にするように迫った。ただ、張遊侠には昨年、降格人事から温家法や胡錦棟によって救われた過去があり、歯向かう事があるのかは懐疑的だ。

 そこで、秀欣平から距離を取る丁折祥を総書記として秀欣平の後任させ、張遊侠を中央軍事委員会主席に置き、丁折祥を中央軍事委員会副主席に兼任させ、まとめる方向だ。秀欣平は中酷の立て直し案が作成されるまで、国家主席の座に就かせたまま、外交イベントには参加させる案が検討されている。

 8月に行われる四中全会で秀欣平の退陣が決定する見込みが濃厚になってきた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る