第39話 猿蟹合戦の猿で何が悪い!

 中酷は、低コスト製造による競争力を失った。薄利多売で収益を上げれば、労働者不足が押し寄せ、賃金を上げて労働者を確保しなければならない。海外の企業の魅力だった賃金は、インドネシア、ベトナム、インドなどに見劣りし始め、工場が移転する傾向が連鎖した。過剰生産した商品を捌くためにダンピング合戦が横行する。弱小企業は夜逃げか倒産。海外企業は工場を賃金の安い国に移し、それに伴い失業者が増加し、高学歴でさへ再就職先を見つけられなくなる。追い打ちは出しゃばり過ぎた中酷を懲らしめる領域から死滅させようと米国が大幅な関税引き上げを行い、その余波は米国の友好国にも波及した。中酷政府は、工場の自動化を推進するが企業にはその投資金額が調達できない所が多いだけでなく、自動化は就労の機会を貧困に苦しむ労働者から奪い、ホームレス化を助長する。

 中酷政府が経済音痴と言われるのは、行き当たりばったりで当たり、虚栄心による奢りがあるからだ。

 中酷は銭の亡者であり、日銭にならない未来への投資と言う考えがない。無駄金を使うより、猿蟹合戦の猿になる事しか選ばない国民性が、災いしか呼ばない現状にある。それと経済活動で利益を得るより、役職を最大限に生かした賄賂文化が指導者の中で日常化している点だ。ミャンマーで起こった地震で中酷国営の建設会社が作っていたビルが完成を待たずに一刀両断されたように崩壊して見せた。その残骸からは鉄骨と言うにはあまりにも細い鉄線が用いられ、コンクリートやセメントは、砂のような脆さを見せた。おから建築の無様さを世界に知らしめた。

 賄賂を得られない担当者は中抜きや資材の転売を行い、基準に満たないばかりか、強度を考えた設計図さへない有様であることを露呈した。今、中酷では「ローン一生、物件は二十年」が当たり前のように囁かれている。

 未来への投資は目先の投資しかしてこなかった中酷は、低スキルの技術力しか得られないでいる。低コスト製造業から高付加価値な製品の製造へのシフトが求められているが「無駄金だ」と一歩も進まないでいる。特に半導体製品の工作機械では50年以上の差が生じている。先進国が古くて使えない工作機を手に入れ、最新鋭と謳い文句を添付して満足している現実がある。現実が見れない妄想民族の愚かさだ。

 以前なら最新鋭を購入するか真似ればよかったが、真似ることさへ出来ない。いい例は新幹線技術を盗んでも高速鉄道は劣化型のものしか使えない。日本でいう「匠」が皆無だからだ。世界は軍事転用も懸念され、中酷への販売を規制している。技術者は金で買えるが、技術者を育てる環境は残念ながら賄賂文化の下では整わない。辛うじてロシアから得るしかないが、最新鋭とは便チャラでも言えない。

 高性能技術を身に着ける環境や人材育成は中抜き・賄賂文化が完全に払拭されなければ実現は不可能だ。損して得を取れの考えを真剣に考える時期に来ているが、まぁ、焼け石に水であることは確実だ。

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