第3話 ガクブル主席
「ああああ・・・」「うわっ」「ひぃぃ~」
秀欣平は人には言えないが、食材に毒が盛られていたり、人が飛び出してきたり、
銃弾が飛んできたりと毎晩のように悪夢を見続けていた。
中酷の皇帝になるため党則を変更してまで政権維持を固持する秀欣平は、警戒心に圧し潰されそうになっていた。就任当初こそ、その権限に口を閉ざしていた重鎮たちも唐翔平が、資本主義を持ち込み繫栄させた経済を真逆の政策を取り衰退させた秀欣平を煙たがるようになっていた。任期撤廃は任期終了までと我慢していた重鎮たちの反感を買う。利権を貪る上級党員からも陰口が聞こえる程になっていた。陰口は回りまわって聞こえてくる、尾鰭はひれが付いて。
陰口は己への批判と耳障りな音として聞こえ、やがて悪夢を導く幻聴となり、不都合な者を粛清した結果、心底相談できる人物は誰もいなくなっていた。元々、出身校の優劣で学歴コンプレックスを持っていた秀欣平は、意見されること自体、自己批判として敵対心を抱いていた。これは自分の愚かさを露呈しないための防御策でもあった。その結果、討論・議論は一切行われなくなった。
秀欣平は。他者の意見を愚かな自分への見下しと捉えるようになり、孤独感しかなかった。それを補うため、血縁関係にあり自分を尊敬してくれる
世界を巻き込んだ流行り病の対処法は、ワクチン開発が出来ない無能さではロックダウンしかなかった。その厳格さは、人民を閉塞感に追い込み不満を募らせた。秀欣平は人民の暴動を恐れた。その結果、流行り病から中枢の北京を守るために用意した有刺鉄線を北京を覆い囲むように張り巡らせ、一般人民を遠ざけるために用いた。現代の万里の長城だ。
世界が向ける冷たい視線を気にするあまり、訪中外国人・企業を見境なくスパイと思い込み排除・取り締まる法案を次々に取り入れた。木を見て森を見ず。中酷の状況を人民に知られないように情報・事実の隠蔽・改竄・偽造に勤しんだ。
度が過ぎる政策は、賄賂や利権で私腹を肥やす党員たちの減益となり、不満が漏れ始めていた。金のなる木である海外企業は悪政を危険視し、中酷依存からの脱却推進を世界規模で推進させた。益々、経済が低迷し、命綱の不動産利益を木っ微塵に吹き飛ばせた。人民の貯蓄は現金ではなく、不動産投資だ。借金をしても不動産を買う人民にとって、不動産価格の下落は人民経済を的確に衰退へと導いた。公務員・兵にも給与が払えない。回せる金がない。倒産している不動産企業を処理できない、国の面子がある。補助金じゃぶじゃぶのEV車業界は、過剰生産の商品を海外に買い取らせる政策で国際社会から危険視され、多額の関税を掛けられたり輸入禁止され、商品の行き場が絶たれ、工場は機能できなくなり失業者を増大。反映していた都市でさへゴーストタウン化していった。その煽りを受け、金融機関も大手から倒産の憂き目に晒されている。流石にここまでくると秀欣平の脅迫政権は、人民の憤怒だけでなく、身内の強酸党員からも秀欣平排除の動きが燻り始めていた。
琳 鄭「米国大統領候補のカードの暗殺が未遂に終わったようです」
秀欣平「プチンの暗殺は噂になるが行動には見えない。自由など謳う米国は、馬鹿な
民や・企業が絡み行動に移す、愚かなことだ」
琳 鄭 「我が国は主席の行いにより、行動に移す気骨な者さへおりません」
秀欣平「上辺はな。政策の失策を追及することは、強酸党の品位・信頼を失墜させる
もの。私を失脚させるだけでは済まないから表に出せないだけだ。利権を手
放し、人民に国を委ねるなどありえないだろう。運転免許もない者を運転席
に座らせられるわけがない」
琳 鄭「自動運転があるではありませんか。AIに頼るのも手かと」
秀欣平「知らないのか。自動運転は人為的な遠隔操作だ。遠隔で映像を見ながら運転
しているのさ。コンピュータが間違うか?我が国の自動運転の車は路上で迷
子になるのさ。未熟な者が操っているからな」
琳 鄭「運転手は失業し、街は混乱ですか」
秀欣平「他国に誇誇れる独自の物がない悲しさだ。文化も経済も技術もおからででき
ているからな」
琳 鄭「我が国の専門家は無能者ばかりなのですか」
秀欣平「さぁ、考え・能力で勝り私を見下す者の意見など聞く耳を持ち合わせない」
琳 鄭「では、どうされるのですか」
秀欣平「我が国に逆らう国の悪態を人民に知らせ、早期治療に気づかせず、死期を待
たせればいい。経済破綻した者から自らを粛清してくれるからな」
琳 鄭「それでは人口が減るのでは」
秀欣平「国の金を頼る者など厄介な存在だ。素直に諦められる者は国には逆らわな
い。危険な仕事に就くのも躊躇わない。人民は強酸党のために働く、それが
我が国のルールだ。喉元過ぎれば人民は不況・貧困にも慣れるものさ。時間
が解決してくれる。腐っていくのを無視して見守れば、文句も言ってこな
い。その実態は、ない袖は振れないだ。そんなこと言えるわけはない」
琳 鄭「困ったときの紛争と言えば台湾侵攻ですが如何されます」
秀欣平「軍にも金を回せない状況でか」
琳 鄭「回せないからこそ略奪目的で腹を満たす方法もあるかと」
秀欣平「だとしてもだオリンピックが終えてからだ。これ以上、世界からの顰蹙《ひ
んしゅく》を買うのは不利益しか生まない。自給自足に失敗した今、孤立す
るのは得策ではない」
琳 鄭「では如何されるのですか」
秀欣平「大手企業の腐っても鯛でのうのうと暮らす企業のトップの者を生贄に人民に
曝け出す。金融・不動産・大手企業を我が国の物にし、完全な国有化を目指
す。これでこの国は我ものよ」
琳 鄭「主、主席。そんなことをすれば富裕層が金に物を言わせて、お命が危険に晒
されるのでは。国有化は利権を奪う行為ではありませんか。特権階級とは賄
賂の額だと聞かされています。金を奪われることを命より重んじる国民性を
煽っては、大統領候補のカードの二の舞にならないか心配です」
秀欣平「心配はいらない。警戒は過度にしている。しかし、心配事が減らないのは、
頭痛の種だ・・・・」
琳 鄭「主席、主席」
秀欣平は、「ヴぐぐ」と急に頭を抱え、その場に倒れ込んだ。琳鄭は即座に301病院へと極秘に手配した。党内部に悟られないように慎重に。中酷では健康状態は指導者としては致命的になるからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます