第34話 卒業アルバム
きっかけは、町中でばったりと中学の頃の友達に会ったことだった。
その子とは中学の時は親友って言っていいくらい仲が良かった。
だけど、私が親の関係で遠くの高校に行くことになった。
最初はメールとかしてたんだけど、高校で友達が出来たことや、会うこともなくなったその子とは自然と疎遠になっていった。
そして、大学を卒業して、ようやく就職が決まった頃、その子と再会した。
正直に言って、その子と会うまでは顔さえも忘れかけてたところだった。
あんなに仲が良かったのに、なんか不思議だなとさえ思う。
でも、その子に会った瞬間に、まるで記憶の封印が解けたかのように、当時のことを思い出す。
それはどうやらその子も一緒だったようで、私たちは7年の時を超えて再び親友へと戻った。
その日はファミレスで5時間以上も話した。
中学校の頃の思い出や、高校や大学に入ったときのことをお互いに話す。
ただ、その子はまだ就職が決まってないらしく、まだ就活している最中だという。
私は「大丈夫、絶対にすぐに決まるよ」なんて、お決まりで気休めみたいなことを言ってしまったのだが、その子はすごく喜んでくれた。
すると、その子は「来週の今の時間って空いてる? また会いたいな」と言ってきた。
私ももちろん会いたいと思っていたから、空いていると返事をした。
その場で待ち合わせ場所と時間を決めて別れた。
そして、それからはその子と毎週会うようになっていった。
それから2ヶ月くらい経ったころだろうか。
不意に、その子から「家に遊びに来ない?」と誘われた。
正直、お金がピンチだったということもあって、私はもちろん行くと言い、その子の家へと遊びに行った。
その子が住んでいるのはごく普通のマンションだった。
しいて言うなら、私が住んでるところよりも若干古くて、家賃も少しばかり安そうってくらいだ。
それくらい、普通のアパートだった。
外観は、ね。
私はその子の部屋に入った時、実はかなりビックリした。
別に部屋が物凄く汚かったとか、高級品で埋め尽くされていたとか、お札が入っていたとか、そういうんじゃない。
一見するとごくごく普通の部屋だ。
たぶん、その子の部屋を見て驚くのは私くらいだと思う。
それで、何が驚いたかというと、同じだったのだ。
その子の部屋が、よく遊びに行っていた頃の部屋と全く同じ。
つまり、中学のときと同じ部屋だったのだ。
置いてあるベッドや机、本棚。
たぶん、置いてある漫画や辞典、参考書まで全部一緒だった。
こんなことってあるんだろうか。
もちろん、中学生の頃はその子は実家暮らしだった。
それを、引っ越した先で再現するものなのだろうか。
机やベッドなんかはお気に入りで、実家から持ってきたというのはわからないでもない。
でも、本や辞典、参考書まで持ってくる意味があるんだろうか。
しかも、それって中学生のときの参考書だ。
「懐かしいでしょ、それ」
本棚を見ながら呆然としていた私に、その子が笑いながら言った。
私は「うん。よくこんなの取っておいたね」と咄嗟に答えたが、心の中ではドン引きしていた。
すると今度は、その子が「あ、卒業アルバム見る? 持ってないでしょ?」と言った。
私は早めに引っ越したということもあり、中学校の時の卒業アルバムを受け取っていない。
だから、このときは部屋の不気味さよりも、卒業アルバムへの興味の方が勝っていた。
「見たい! 見たい!」
私がそういうと、その子は机の引き出しの中から卒業アルバムを出してくれた。
その子がゆっくりとページをめくっていく。
「うわー! 懐かしい!」
私は思わず声をあげてしまった。
でも、本当に懐かしい気持ちでいっぱいになったのだ。
中学の頃の記憶が、どんどんと鮮明に思い出される。
3年間という短い時間の中で、たくさんの思い出を作った中学時代。
思い出してみると、それは宝物のように感じるほどだった。
なんともいえない、幸せな気分。
そして、私たちは最後の全体写真を見ながら、クラスメイトのことを一人一人思い出してはその頃のエピソードを話し合った。
その日は変な高揚感のまま、家に帰った。
ただ自分の部屋に入った瞬間、それが一気に、嘘のように消えた。
逆に血の気が失せ、怖さがジワジワと湧き出てくる。
それは私があることを思い出したからだ。
「なんで、私、全体写真に写ってるんだろう?」
あの集合写真は私が学校を休んだ時に写した写真だ。
あのときは、前の日に先生から「明日は卒業アルバム用のクラス写真を撮る」と言われていて、気合を入れて髪を切ったのだが切りすぎてしまった。
こんなので卒業アルバムに載りたくないと思って、悩みに悩んで学校を仮病で休んだ。
だからはっきりと覚えている。
でも、あの卒業アルバムには写っていた。
その子の隣にはっきりと。
私は不安になり、その子に連絡しようと思った。
だけど、今更、それができないことに気付く。
なぜなら、今までは次に会う約束はその場で話して決めていたからだ。
だからその子とは連絡先を交換していない。
なんでこんなことに、今まで気づかなかったのかが不思議だ。
だって、何かがあって約束に行けなかったり、遅刻しそうな場合は前もって連絡を入れることを考えるはずだから。
それなのに、連絡先を交換するという発想が出てこなかった。
そして、さらに致命的だったのは、次に会う約束をしていないということだった。
毎回、場所も時間も結構バラバラだった。
だから、『いつもの』場所というのがない。
そこで私は次の週にその子の家に行くことにした。
だけど、さらに私は驚くことになる。
それはその子じゃなく、全然違う人が住んでたからだ。
このマンションの、この部屋番号だということははっきりと覚えている。
間違いない。
でも、出てきたのはその子じゃなかった。
念のため、出てきた人に話を聞いてみたが、そんな人は知らないし、この部屋にはもう5年以上住んでいると言われてしまった。
私は混乱した。
一体、なんなんだろう、と。
それから私はツテを辿って、なんとか中学の頃のクラスメイトの連絡先を手に入れることができた。
そのクラスメイトは実家に住んでいるそうなので、その実家に電話をかけてみた。
そのクラスメイトは最初、懐かしいと、割とテンション高めに話してくれたが、私が卒業アルバムの話をすると一転して暗い声になった。
「捨てたよ」
はっきりとそう言われた。
確かに、そういうのを取っておかない人もいるだろう。
でも、そのクラスメイトの話では取っておいている人の方が少ないんじゃないかというのだ。
理由を聞いてみたら、「心霊写真が写ってたから」と言われた。
なんでも『全体写真に不自然な手』が写っていたのだという。
しかも、あの子の肩をがっしりと掴んでいたらしい。
そして、やっぱり、その全体写真には私は写ってないと言われた。
私は最後に、そのクラスメイトに、あの子の連絡先を知らないかと聞いた。
すると――。
「ああ、あの子は6年前に死んだよ。事故で」
そう言われた。
それを聞いて、私の頭の中は真っ白になった。
じゃあ、私が会っていたあの子はいったい、何だったんだろうか。
それにあの卒業アルバムは?
疑問だけが残る。
でも、私はもうこれ以上、このことに関わるのはやめようと決め、忘れることにした。
終わり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます