第29話 魂を食べる

俺は昔から何かと運がよかった。


それはクジが当たるとか、テストでヤマが当たるとか、好きな人から告白される、とかそういう運じゃない。

なんていうのかな。

生きてるっていうか、安全に関しての運がいい。


例えば、道路に飛び出して車に轢かれても平気だったり、階段を踏み外して下まで転がり落ちたのに傷一つなかったり、周りがインフルエンザになってても俺だけかからなかったり、みたいな感じ。

とにかく、危ない目に遭っても何事もなく終わるのだ。


それを利用して、危ないことをやったりとかはしないけど、人からは危機管理の意識が低いとよく言われる。

たぶん、無意識に何をやっても大丈夫だろうって思い込んでるのかもしれない。


そんなことを友達と話してたら、幽霊とかどうなんだろう、という話題になった。


つまり、物理的な危険は回避できるけど、悪霊とか呪いとか、そういうスピリチュアル的なことにも影響するのかって話だ。


その話を聞いて、俺は何となく興味が出た。

確かにそんなことは今まで試してきてなかった。


だから俺は友達を誘って心霊スポットに行ったり、こっくりさんとかひとりかくれんぼとか、そういう怪しい儀式みたいなのもたくさんやってみた。


結論から言うとそっちの方面でも、俺の運はよかった。


友達が呪われたとか言ってお祓いに行く中、俺は全然平気だった。

ラップ音とか、誰かの気配がするとか金縛りとかさえも一切ない。


周りの友達が、精神的に病み始めたので、こういうことは止めようとなった。


まあ、当たり前だ。

そんな実験自体、何の意味もない。


けど、友達の1人が最後に、とっておきの場所に行ってほしいと言ってきた。


それは「魂を食べる地蔵」という都市伝説がある場所だ。

なんでも、地蔵に気に入られると魂を食べられてしまうのだという。


胡散臭い。


最初、その話を聞いたときに思ったことだ。

心霊スポットよりもしょぼそうと思い、俺はその友達の言っていた場所を訪れてみた。


ちょっとした林の中に、ポツンと置いてある地蔵。

特に不気味とか、怪しい感じはない。


俺はやっぱりなと思って、地蔵の頭をポンポンと叩いた。


そのときだった。

目の前が真っ暗になった。


それと同時に「あ、食べられた」という感覚がした。


なんだろ。

どうやって表現したらいいかわからないけど、とにかく「食べられた」っていう感覚がしたんだ。

正直、死んだなって思った。

それぐらいはっきりした感覚だった。


で、気が付くと俺は地蔵の目の前で寝ていた。


夢かな、って思ったけど、こんな場所で寝ようとするわけがないし、寝ようとしたなんて記憶がない。

だから気絶してたんだと思う。


念のため、次の日に病院に行って、色々と検査をしてもらったけど、特に異常はなかった。

お祓いなんかもしてもらったし、身体的にも精神的にも特に違和感はなかった。


でも、あれから一つだけ気になることがある。


それは運が悪くなったことだ。

ちょっとしたことで怪我をするようになったし、風邪もひきやすくなった。


事故に巻き込まれて、人生初の入院をすることにもなった。


お祓いもしたし、呪われているような感覚もないし、不気味な現象も起きてない。

だけど、外に出るのもなんだか怖くなるレベルだ。

何か遭ったら死ぬんじゃないかって。


それにしても、俺は一体、地蔵に何を食べられたんだろうか?

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