Triumph Bullet:零【トライアンフ バレット:ゼロ−栄光の弾丸−】~出会いと始まり~
葉月幸村
第零章
第1話 Triumph Bullet
バラララララララララッ!
銃声が断続的に空気を揺らす。
ドカアァンッ!
近くでは何かが爆発したような音も連続して轟いていた。
爆風で巻き上がった砂煙は風に揺蕩い消えていく。血と硝煙の臭い。渦巻く戦場で、死神から首元に鎌をかけられたような感覚が…なんということはなく。
「おつかれ~、そろそろ休憩すっか」
「う~い」
「ふぅ~疲れたぁ~」
「やっぱりまだ鈍ってるなぁ~」
休憩の言葉を皮切りに先ほどまでの銃声や爆発音は止み、気の抜けたやり取りが交わされた。
「んじゃいい時間だし俺は飯食おっかな」
「あたしも~」
時刻は午後22時過ぎ。夕食というには些か遅めの時間だけど、全員夜型の生活リズムなので誰も違和感を感じない。
俺は通話から抜け、買いだめしているカップ麺を作るべくお湯を沸かし始めた。すぐに沸騰したお湯を入れて出来上がりを待つ間、先ほどまで座っていたゲーミングチェアに腰を下ろす。
目の前のPCには、今しがたプレイしていたゲーム、
俺、橘 隼人はこのTriumph Bulletのプロゲーマーとして活動している。プレイヤーネームは名前そのまま”
このゲームはリリースから約2年が経つFPSタイトルで、今最もe-Sports界隈を賑わせている。3人で編成されたチームが20チーム同じマップで銃撃戦を繰り広げ、最後の1チームに残れば
それぞれが寓話や神話をモチーフとした”英霊”を選択し、それぞれに与えられた強力なスキルやオーバードライブ(略称:OD)を駆使しながら戦いを繰り広げていく。
プレイ人口はリリースから1年半でPC版・コンシューマー版・VR版を合わせて1.5億を超え、月間アクティブユーザーも1000万人越えと今一番プレイ人口の多いタイトルだ。来月から世界大会の前哨戦としてアジアの頂点を決めるプロリーグが開催され、俺の所属するチームはそこに招待枠として参加することになっていた。
チーム名は
俺のチームでの役割はIGL(In Game Leader)、簡単に言えば司令塔だ。刻々と動く状況を把握してチームの動きや方針を判断する。俺の指示一つでチームの命運が変わるからプレッシャーもあるけど俺はこの役目が大好きだ。
2人目のメンバーは
少し口調が強いとこはあるけど仲間想いのいいやつで、互いに絶対の信頼関係を置いてる相棒と言える存在だ。実はかなりのコミュ障で慣れるまでは使い物にならなくなったりもする。
もう一人の火力担当が楠 ひより。俺たちのメインスポンサーになってくれているVtuber事務所の”ぶいあど”に所属している。銀髪のショートヘアで碧眼。透明感のあるヴィジュアルだ。
とあるきっかけで俺とSetoがコーチングをすることになったんだけど、凄まじい努力でメキメキと実力をつけ、3人で挑んだカジュアル大会で優勝を勝ち取った。その急成長するポテンシャルと、がむしゃらに努力できる貪欲さに惹かれて俺とSetoがスカウトしてチームに加入した。
そして最後。このチームのコーチ兼リザーブを務めるのが
一人称は僕だけど女の子ね。僕っ娘って言うんだっけ? お兄さんが2人いる末っ子で、遊んでいるうちにそうなったらしい。
リザーブってのはチームメンバーが急遽参加できなくなったときに代役として出場できる補欠みたいな役割かな。
今俺たちはこのゲームのメインコンテンツである”レート戦”を回している。
プレイヤーは前半と後半に分かれる約2か月に渡るシーズンの中でレート戦に挑み、生存順位や敵のキル・アシストを元に得られるレートポイントを蓄積することで、ブロンズⅣから始まる
Tierは上に行けば行くほどプレイヤーの質が上がっていき、勝ち上がるのが困難になる。
ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ・ダイヤを経て、上位0.1%に到達したプレイヤーはグランデへと到達する。
ここまで来るだけでも至難の業で、多くのプレイヤーはここを目指して日夜TBに挑んでいた。この称号に至れば猛者として認められる。
しかし、1000人に1人のプレイヤーたちが鎬を削ったその果て、上位2500人のみに名乗ることを許されるTierが存在した。
パンデモニウム。”地獄”と訳されるこのTierに到達するのは、まさしく化け物と呼ぶに相応しい猛者中の猛者だけだ。
銃の
世界大会に臨むほとんどのプレイヤーはこのパンデモニウムに至っていて、俺たちも全員到達してる。
世界大会の予選には5大陸合わせて3万を超えるチームが参加したけど、今進行中の大陸間のプロリーグ最終予選の時点でほぼ全員がこの称号のプレイヤーに絞られていた。
数多くの企業がプロチームを立ち上げてるけど、パンデモニウムのプレイヤーを抱えることは中々に難しい状況だ。グランデの有望な選手を育成したり、好待遇でFAとなった選手を引き抜いてなんとか地力を上げようとしてる。
ピンポーン。
カップ麺をちょうど食べ終わった頃、宅配便が届いたことを知らせるインターホンが鳴った。昨日Setoが言ってたものが届いたのかと思い、足早に宅配ボックスに確認にいく。
「やっぱり」
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