第25話

そして勢いよく此方に向けて跳躍した。

「黒田ァァァァァァァァァ!」

彼は空中で右腕を振り上げる。

僕は刀を下に構えなおし、空中にいるフジマキを見上げる。

「アァァァァァァァァァァァァァ」

彼は僕の方へ落ちてきた。

僕はかわすことなく刀を下段から振り上げる。

フジマキも腕を降りおろす。

彼の肥大化した右手とチタンブレードの刃が衝突し、ガンという鈍い音が響く。

フジマキは衝撃で撃たれたところから血が流れ出ていた。

僕はフジマキとつばぜり合いのような形になる。

「死ねぇぇ」

フジマキは荒い息をしながら力強くチタンブレードを押してくる。

「意識があるならなんで《ノー・ネーム》になった。ならなくても良かったじゃないか」「うるさい。僕を除け者にした奴全員、殺してやる!」

「ふざけんな!そんな独りよがりで何になる。自分で自分の首を絞めてるだけだ!」

「知った口をきくな!」

フジマキは身体をひねり、僕の脇腹に蹴りを入れてきた。

僕は勢いで後ろに吹き飛ぶ。

「ぐあぁ」

そのまま吹き飛び、地面を転がる。

転がった勢いを利用しながら立ち上がるとすでにフジマキが近づいてきた。

しかし、隊員達がフジマキを射撃する。

フジマキの身体は銃弾に当てられ傷ができていく。

「邪魔するな!」

フジマキは吠えた。

隙をみて僕はチタンブレードを振り上げ、フジマキへと斬りかかる。

「相手は僕だろ!」

彼の背にチタンブレードの刃を降りおろす。刃は彼の肉を切り裂いた。

「がっ……」

声にならない声をあげ、フジマキは振りかえる。

「黒田ァ!」

彼はひっかくように腕を降った。

僕はチタンブレードで受け流し、そのまま彼の懐に飛び込んだ。

「おぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」チタンブレードを真横に倒しそのまま、フジマキの身体に刃を当てるようにしながら振り抜いた。

刃は彼の身体を切り裂き、下半身と上半身を切り離し、真っ二つにする。

ブチブチという彼の筋組織が千切れる音が聞こえた。

そのままチタンブレードを振り抜き僕は前のめりにつんのめった。

顔に生暖かい何かが当たる。

多分、彼の血液だろう。

それに加えてさっき彼につけられた傷が痛む。僕はすぐにフジマキへと視線を戻した。

彼の下半身だけが根を生やした木のように直立していた。

切断面からは湧き出る温泉のように赤い鮮血が溢れていた。

地面には彼自身が倒れていた。

僕はチタンブレードを下に構えながら彼に近づく。

フジマキは仰向けになり僕を睨んでいた。

彼の腰から下はなくなり少しずつ血がながれ短い間隔で呼吸をし、小刻みに震えていた。「はぁはぁはぁ………」

僕は周りをみる。

イリスや隊員達は僕の方を黙ってみていた。僕は視線をフジマキに戻す。

「あきらめろ。もうどうにもならない」

僕はチタンブレードを彼に向ける。

「こんなのって……、酷い……じゃないか」フジマキは荒い呼吸をしながら言葉を発した。

「僕を……、虐めてるやつ……を殺しただけじゃ……ないか」

フジマキは身体を震わせながら言った。

「確かにクソ野郎なことをしていたが殺していいやつらじゃない。キミは一番、やっちゃいけないことをしたんだ」

僕はチタンブレードを彼にむけながら淡々と言う。

「やっちゃ……いけないことって……なんだよ……?力を欲することが……そんなにいけないのかよ……」

「キミはやりすぎたんだよ。《ノー・ネーム》になったらもう人には戻れない。もう終わりだ」

「何が終わり……、なんだ……?」

フジマキは震える声で言った。

「化け物の……姿になることが……終わりなの?僕は……人間だ……」

その一言が僕の後頭部を殴ったような感覚にさせた。

「………………」

僕は何かを言い返そうとして唇を噛んだ。

「はぁっはぁっ……。なんだか寒いよ……」フジマキの瞼が半開きになる。

切断面がナノマシンの影響で修復を繰り返していたが流石に今の状態で傷は修復することができない。

彼の血液が地面に広がり、赤い水溜まりを作っていく

僕はその光景から目をそらし、フジマキの顔を見る。そしてゆっくりとチタンブレードを上にあげていく。

「君を……怨むよ……」

フジマキは震える声で言った。

僕はチタンブレードを降りおろした。

刃先は首元をとらえ、首をはねた。

もう一度、暖かい彼の鮮血が僕の頬にかかった。それを拭い彼の亡骸に目をやる。

はねた首は虚ろに目を開き、呪詛でも唱えているかのように口を半開きにしていた。

なぜだろうか。

どっと疲れが出たのか僕は膝から崩れ落ちた。「クロ!」

イリスがかけより僕の顔を覗きこむ。

「イリス……」

僕は彼女の名前を呟き、瞼を閉じた。

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