第3話 摩耶

 魔力とはモンスターの装甲である。そのため『魔力感知』を極めればモンスターの防御が薄い場所を攻撃できる。


「グウオオォ」

「止めだ!」


 深層に出現するモンスターであろうと魔力による装甲がなければ防御性能は他の階層のモンスターと差程変わらない。そのため簡単に討伐が完了した。

 回りにモンスターの気配が無いことを確認し剥ぎ取り作業に移る。


「討伐依頼では証明部位や買取り部位を熟知しそれ以外の部位を持ち込まないようにする。もし覚えるのが苦手なら…こういう冊子に色々と載ってるので確認することを推奨します」


 探索者協会で発行している冊子をカメラに写るように提示し『亜空』にしまう。


「もし荷物になると思うのならマジックバック等持ち込むのも良いと思います。自分が持っている『亜空』なら…この通り、ドラゴンを一頭まるまる収納できるのでおすすめします」


 『亜空』に収納したドラゴンを取り出し剥ぎ取りに戻る。とここで失敗したことに気がつく。


「…ドラゴンはほとんどの部位が買取り部位でした。例として上げるには不適切でした。すみません。とりあえず不要な部分だけ取り除きます。あとここで役に立つスキルが―――」


 ミスを取り返すように口数ぎ増す煉であった。


―――――――――――――――


 既に何本かマナー動画を投稿した煉チャンネル。チャンネルの管理を一任している優弥は順調だと言っており、確かに見てくれている人は結構いる印象である。


「あ、煉くん。買取り?」

「はい摩耶まやさん。今日はあんまりでしたけど」

「そうなの? あ、もしかして今日も動画の撮影してた?」

「はい。もしかして見てくれてるんてすか? えーとなんたらチャンネル」

「煉チャンネルね。なんで投稿者自身がうろ覚えなのよ」

「撮影以外のことは友人がやってくれてまして」

「まあ煉くんは配信とかに興味はなさそうだもんね。あの煉くんが配信って驚いたもん。まあタイトル見て煉くんぽいなって思ったけど」

「そうですか?」


 ただ動画が探索者のマナー向上に繋がってるかと言えばよく分からないのが現状である。そもそも1動画でマナー向上するくらいなら、探索者協会の活動で既に達成している筈である。


「今日は剥ぎ取りのマナーの動画を撮影したんですが、間違ってドラゴンを狩ってしまって」

「…ああドラゴンじゃ剥ぎ取りを教えるには不向きね。協会としてはまるごと持ってこいって感じのモンスターだもの」

「なのでちゃんとエンペラーゴブリンとエリートゴブリンを狩って剥ぎ取りをしてきましたよ」

「ふふ、そうなの。確かにゴブリンは剥ぎ取りの基本だものね」


 しかし探索者を始めた頃からお世話になっており、ほぼ専属受付嬢みたいに世話をしてくれている摩耶に認知されているのであれば、目的の達成は兎も角として動画を撮影している意味はあるのではと思う煉であった。


 そんな2人の会話を聞いていた受付嬢たちは内緒話に花を咲かせるのだった。


「特級探索者に配慮して専用の受付所と専属受付嬢の摩耶さんを煉くんに付けるのは理解できるけど」

「ねー」

「摩耶さんの天然さが、煉くんが一般的な探索者の常識から外れていくのに拍車をかけてる気がするのよね」

「まあそれで煉くんが損してる訳でもないからいいのかしら?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る