これがラジオ・K氏の一番「読みやすい」作品かもしれないと思いきや、一筋縄ではいかない。
大分への4日間の取材旅行を綴った実話エッセイなのだが、全編がバイキングサーガのような大仰な語り口で書かれていて、「東京→大分」が「クジラの海を超えた」になり、「温泉」が「地獄」と化し、「ワニ」が「リアルモンスター」として立ち現れる。旅の失敗やドタバタ(寒さで半死になったり、地名の漢字を全部間違えて読んだり)も武勇伝のように語られるので、終始ニヤニヤしながら読める。
別府地獄めぐりの話では、各源泉を見るたびに「幻視」した小説の怪物のアイデアが書き添えられていて、作家の頭の中がそのまま覗けるような珍しい構成になっている。取材日記と創作メモが混ざり合った、ジャンルのない文章だ。
他の作品とまるで世界観が違うのに、根底にある「何でも神話・異形のスケールで語る」癖が一貫していて、これもやっぱりラジオ・K氏の作品だと分かる。作者の人柄と文体が好きになれた人はまずここから入るのが一番かもしれない。