第10話 騎士団長と賢者

カイナがシャルマントに手を貸しながら馬車から降りたとき、


「カイナ様!?どこにおられたのですか!」


そう言いながら走って来たのは騎士団長だ。

騎士団長は、御歳40になろうかといった騎士で、普段は森の監視や、領内の安全を守っている。

彼に先程までの話をすると、


「そうなのですか!ですが、なぜシャルマント様おひとりで?」


ヴァハトゥン家には、近くに森があり、そこから魔物が生まれる。

魔物は、その地にいる魔力のない一般てきな動物が、様々な要因で魔力を多く蓄えて魔物になる。


ちなみに、エルフやドワーフなど、人がモチーフのものは、人間の進化の際、環境や魔力の量などによって新しい変化をした人間である。

獣人などは、獣から人型に進化している。


それらの人種や他の国から攻められた時、砦となり、逆に攻める時は剣となるのが辺境伯家だ。

そのため、ヴァハトゥン家には人間の中でもとんでもなく強いものが多い。

カイナの父も母も、兄のデオンもそうである。

この騎士団長もそんな人外の中の一員であり、この人のおかげで普段は森の魔物が外に出るなどありえないが、森の中で襲われるのは予想外だったようだ。


「実は公爵家で大型の魔物が見つかったのですの」


「なんと!公爵様はご無事ですか?」


「ええ。あの魔物はあまり動かないのですの。」


「その魔物はどんな形でしたか?」


「大きな亀ですの。あまりにも大きいから早く倒したいのですけど、誰の攻撃も効かないのですの」


「私とは相性が悪いですね…アルフレッド殿に向かわせましょう」


「あの賢者様ですの!?ここにいらっしゃるのですの?」


「ええ、カイナ様の教師をしていただいておりますよ」


「それでカイナ様もあれほど強いのですのね!」


ここまで蚊帳の外であったカイナは、どこにでも居そうな風貌の教師であるアルフが、賢者とかいういかにも強そうなな称号を持っていることに驚いた。


「アルフって賢者なの?」


「はい。最近では砂漠からの軍の侵攻を1人で消滅させたこともありました。」


「えぇ……なんでそんな人が教師してるの?」


カイナはアルフについてもっと聞こうとした。


「そうですなぁ、貴方様に才能を感じたからですかな」


「アルフ!?」


唐突に背後からそう言われたカイナは振り返り、足音も気配もなく背後に現れたアルフに戦慄した。


「カイナ様、早速その亀を倒しに行きましょうぞ、課外授業ですな」


「では、騎士団長殿、あとは任せましたぞ」


アルフはそういうと、カイナを抱えて空を飛んでいった。

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