第47話 対策会議



 和解し、三人で生徒会室に戻る。皆には適当な言い訳をし、予定通り議題を元に会議。


「今回の定例会議の議題はズバリ、本校とその他の地域で話題に上がる――「不審者」について」

『……』


 演説の如く勢いで話す比奈に注目し。


「以前から話もあったが、青南高校周辺及び私や小宮君が住む住宅付近で「不審な人物を見た」という目撃情報が相次いでいた。それが今回残念なことに被害者が出た。これは由々しき問題であり、我々生徒会は生徒たちの安寧と平穏を守るために動こうと思う」


 それは以前、小宮が美咲の手で生徒会室に連れられ「補佐」に任命された時の話し。

 あの頃の小宮は適当に聞き流していた。その内容が「不審者」「ストーカー」といった話題。それも美春や比奈の父、利憲の話を聞いたことで信憑性は高まり。比奈の言う通り最悪なことに被害者が出てしまった。


「比奈ちゃん。具体的な解決策としてどう私たちは動くのかな?」


 白石が質問。


「いい質問だ。まず、青南高校周辺の見張りの強化。それと登下校をする際に二人以上で帰る習慣をつけること。一人で下校をして被害に遭わないための最低ラインだ。そして「女性」を狙うその習性から最も重要なこと――帰る際は必ず「」を一人自分の帰路にボディーガードとしてつけること」

『……』


 比奈の言葉に真っ先に――小宮の元に視線が集まる。


「……まぁ、自分でいいなら不審者が捕まるまで皆さんのお供でも何でもしますよ」


 わかっていたことなので渋々と。


「小宮君が一緒なら安全だね」


 何を根拠にその自信が持てるのか解らないが美咲が自慢げに。


「弟君は私が守るよ〜」

「えー、先輩じゃ不安なんですけどぉ」


 逆に白石は力こぶを作り小宮を守ると豪語し、夢園に至っては完全に下に見ている。


「知り合いの男性で信用と信頼を置けるのは小宮君が一番だからね。期待してるよ」


 海原はキザっぽくウインク一つ。


 嫌われるように仕向けたけど、あの一見以来今まで以上の信頼を海原先輩から感じる。


「生徒会は小宮君に馬車馬の如く活躍してもらうとして、この話は教論たちにも話して全校生徒に伝える。対策としては今のところこれくらいだ。被害が少なくなり、あわよくば犯人が捕まってくれればいいのだがね」


 ため息一つ。


「会長。その「不審者」の見た目とかわかったりしますか?」

「黒のパーカーにマスクをし挙動不審の男性……ということ以外は何も。相対した女子生徒たちもパニックになり逃げることに精一杯で容姿は確認できていないそうだ」


 美咲の質問を受け、比奈は残念そうに。


「そう、ですか。ありがとうございます」


 それ以上は質問をすることなく。


 それから他の議題も話し、会議はつつがなく終了し。


 ・

 ・

 ・


 今日は早目に切り上げて皆で帰ろうという話になり、生徒会室に残っていた小宮と美咲も帰りの支度を済ませ。


「あ、小宮君」

「ん?」

「文ちゃんから連絡があって今日からしばらくの間お家の送迎があるみたい。だから一緒に登下校できそうにないって」

「それは仕方ないね」


 その適切な対応に納得した。


 南條さん辺りに送迎をお願いするのかな。


「美咲も美春さんに頼めば?」

「私は大丈夫。小宮君がいるし、もし万が一あれば……」


 肩から下げるバックの中身をゴソゴソと漁り、黒い笑みを携えて。


「そ、そう」


 普通に怖いんだよね。頼むから双方に危ないことはしないで欲しいけど。


「冗談冗談。小宮君を信じてるから」

「ん、任せろ」

「ふふ、任せた。皆、先に行っちゃったし私たちも行こっか」

「だね」

 

 二人肩を並べて、その手を繋ぎ。


 

 ◇◇◇



 暗い夜道を二人肩を並べて歩く。

 その後姿は小学生にしか見えず。


「――君とこうして二人で肩を並べて歩いて帰るのも珍しいね」

「会長はいつも一人で帰りたがりますから」


 隣で歩く比奈に相槌をし。


 小宮と比奈は帰路が同じなので他の面々と別れるとお互い世間話をして帰路につき。


「仕事があるからな。それに……」

「なんです?」

「……別に」


 何か伝えようとしてやめ、そっぽを向く姿に首を傾げる。


「……あぁ。僕達が肩を並べて歩く姿を見た人が「こんな夜遅くに小学生が、なぜ?」と疑問に思うことを危惧してですね」

「違うね」


 閃いた内容を即答で否定されて。


「見た人に小学生の下校風景を連想させてしまうから恥ずかしいんですねわかります」

「違う!」


 怒りの怒号が鳴り響き。


 怒らせてしまった。


「では、一体?」

「……はぁ。もう君の言う通りでいいよ」


 可哀想なモノを見る目を向けられて。

 その間、会話はなく。


「会長は「不審者」についてどう思いますか?」

「不思議な質問をする」

「つい気になって」


 唐突な質問にしばし考えて。


「……所詮、愉快犯だろう」

「その答えは?」

「「女性を狙う」という行為。即ち、自分の欲に呑まれたバカの犯行か。もしくは世間を騒がせたいバカか……どちらにせよ普通の思考の持ち主ではないだろうね」

「ふむふむ、なるほど」


 比奈の会話を聞き、手に持つメモ用紙にスラスラと何かを書いていく。


「何を書いてるのかな?」

「あぁ、会長の言葉はタメになると思って」


 指摘され、今まで記載した比奈の言葉の数々が書かれたページを見せる。


「君はマメか、それとも一周回って私を馬鹿にしてるのか」

「ははは。馬鹿になんてしてませんよぉ〜」


 微笑を浮かべてメモ用紙をしまい。


 海原先輩にお願いされて鷲見白会長の言葉をメモしているとは口が裂けても言えん。

 海原先輩あの人は僕になんて難題を押し付けるんだよ……自分でやってくれ。


「犯人は「女性」を狙う。会長だったらどんな女性を狙います?」


 話題を変えるべく、適当な話を振る。


「……犯人にもよるだろうが、一般的には若く、見目美しい女性だろうね」

「では、鷲見白会長は気をつけなくては」

「なぁ!?」


 小宮の言葉に瞬時に顔を真っ赤に染めた比奈は過剰に反応を見せて。


 ふふふ。これで以前小馬鹿にされたことのお返しを返させてもらいました。


 以前、自分のことを「小柄」と呼んだ比奈に対してミクロほどの恨みを持っていた。それをこの際に返した。


「あ、でもでも美人は美人でも「小柄」で「小さい」鷲見白会長じゃあ――」

「ふんっ」

「おっふ!?」


 意気揚々と話す小宮の土手っ腹に比奈の渾身のストレートがめり込む。


「悪かったね「色々」と小さくて。私はこうして武術の心得があるから問題ない」

「そ、そっすね」


 どうやら地雷を踏んだようで。


 腹を抱えた小宮はヨロヨロと立ち上がり、土気色の顔で相槌を打つ。


 あ、危なぁ。この人本気で殴ってきたよ。僕じゃなきゃ大怪我だし、気絶もんだよ。合気道の有識者怖い……。


 比奈は合気道を幼少の頃から習っており黒帯所持者だったりする。そんな比奈がお構いなしの一撃を入れるあたり、小宮に対して相当ご立腹。


「私はいいとして、だ。その身のこなしができるなら問題ない。彼女たちが危ない時は頼むよ。私は自分の身を守れても全てを守れるわけではないからね」

「余裕があれば会長も守ってあげますよ」

「それは心強く素敵な提案だ」


 その時にはもう比奈の顔は普段通りに戻っていて、小宮と顔を見合わせて笑う。


 比奈の自宅付近になり。


「では、私はこっちだから」

「はい。また明日ですね」

「あぁ、よい夜を」

「はい。あ、会長の耳赤いですよ。では」


 小宮は最後にそう呟き。


「……」


 比奈は比奈で言われた通り自身の耳に触れ、持っていた手鏡で確認する。


「……赤くないではないか。阿保」


 耳から手を離し、悪態をつく。

 

 その頰は未だに淡い朱色に染まっていた。


 ・

 ・

 ・


 比奈と別れた小宮はスマホに来ていたメールと睨めっこ。


「……「登下校できない分、構ってください」ね。僕もそんなに暇じゃないけど……後々の問題を考慮したら仕方ない、かな」


 文から送られてきたメールを見て。


「問題は山積み。捌けるものから捌いていこう――」


 誰に聞かせるでもなく、自分に言い聞かせるようにひとりごち。


 闇道を進む。

 


 

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