第34話 白石先輩とお出掛け 前編


 5月4日


 予報通り今日は晴天。


 昨日、○ちゃんねるの皆からアドバイスをもらったことを活かし衣服、スマホなどを確認して「盗聴器」「GPS」が付けられていないことを万遍なく確認した。

 あの一件(美咲と文が結託して小宮を罠にハメて「過去」を話した)以来、美咲本人から「盗聴器」を付けていないとは聞いていたもの……念の為、「GPS」も同じ理由。


「――白石先輩に昨日のうちに美咲達にバレた際の布石も伝えているし、大丈夫」


 そう自分に言い聞かせ、待ち合わせ場所に到着すると待ち人の確認をした。


 待ち合わせ場所は自宅から最寄駅に乗って三駅先の駅時計前。

 今日はショッピングモールで先輩の白石と美咲の誕プレを決めることに。

 本来は他の生徒会の面々も来る予定だったが鷲見白は「そういうこと」に疎く他の海原と夢園の二人は外せない用事があるとか。


「これは「生徒会」からの日頃のお礼だ。疚しいことなど一切ない。白石先輩以外来ないのは……きっと忙しいんだ」


 美咲を抜いた面々で話し合った結果「彼氏」である小宮とそういう方面で頼りになる白石の二人で買い物へ。

 当初は美咲の誕プレを一人で探す予定だったが、自分でもどんなものを渡せばいいか悩んでいたので今回の同行は助かる。


「少し早すぎたかな。待ち合わせの10分前くらいはマナーだと思ったけど――」

「だーれだ?」

「……」


 と思っていた矢先、誰かの手が視界を塞ぐ。


「……白石先輩?」

「正解!」


 「声」で誰かは分かってはいたがその行為に意味があると悟り素直に従ってみた結果どうやらその対応で当たっていたらしい。


「おはよ〜弟君は今日も可愛いね!」


 白石は小宮から離れてニッコリスマイル。


 先輩の服装はお姉さんらしい私服姿。

 その美春さんともいい勝負をするであろうお胸が衣服を押し上げ……眼福。


「白石先輩おはようございます。先輩の服装も素敵ですね。ただ、弟君はちょっと……」


 胸を凝視していたことは悟られることなく澄ました顔で。


「ありがと。呼び方は変えられないなぁ〜そ・れ・よ・り・も……さっきから何処を見ているのかなぁ〜? カナカナ〜???」

「はて、なんのことで?」


 頭部に摺り寄せてくる衣服越しでもこれでもかと分かる柔らかい胸の感触に意識を向けることなく、惚ける。


「ふふふ。まぁいいでしょう。さっそく誕プレ探しの旅に出発しようか?」

「お供します」

 

 白石の言葉に従者のように続く。


 ・

 ・

 ・


「まさかあの美咲ちゃんがヤンデレさんだとはねぇ」

「ヤンデレまではいかないと思いますけどね。少し、愛が重いだけかと」

「でもいいなぁ〜一途に愛してくれる人がいるんだからぁ〜」


 以外にも白石先輩は羨ましそうに呟く。


「……少し不謹慎な質問ですが、白石先輩は付き合っている男性はいないのですか?」

「いないよ?」


 そう呆気らかんと答える先輩に拍子抜けしてしまう。


「……先輩のことだからてっきり素敵な彼氏さんがいるのかと思ってました」

「あはは、残念。告白は何度か受けたことあるし、欲しいと思ったことはあるけど、ね〜」


 「「友人」以上の関係には進めなくて」と苦笑気味に。


「先輩は美人なんだからすぐに彼氏なんてできますよ」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど。家族や弟君以外の男性って少し躊躇っちゃう。視線がエッチだし私の体しか求めていないって感じでちょっと怖い、かな?」

「な、なるほど」

「あれあれ? 目を逸らしてどうしたの?」

「……なんでもないです」


 駅からショッピングモールまでは5分ほどの近さ。その際の会話は弾んだ。


 「胸」の話題で先輩の目が爛々と輝き出した時から色々とバレていると悟ったのでなんとしてでも話題を変えるべく話を逸らす。

 

「弟君がモテるのは確かに解るかも」

「?」


 あと少しでショッピングモールに着くという時に隣に歩く先輩がポツリと溢す。


 車道側で歩いていた小宮は言葉を拾いはしたものその意味が分からず、白石の顔を見る。


「ふふ。そういうところだよ」

「……はぁ」


 やはり、自分にはその意味が分からず戸惑いの顔を作ってしまう。


 結局理由は分からずじまいで到着。

 自分も深く追求するつもりはないのでそのうち忘れるだろうと思うことに。


「事前のリサーチでめぼしいお店は決めているからお昼までに回れそうだね」

「なら、その後はお昼ご飯でも食べますか」

「決まりだね!」


 二人肩を並べて楽しく会話に花を咲かし、目と鼻の先のショッピングモール内に入る。


 ・

 ・

 ・


 白石に案内されるままに目的地に到着。

 そこは女性が好んで扱う雑貨用品が数多く取り扱うお店。


「……」

「?」


 色とりどりの商品に目を奪われていた時、不意に隣にいた白石が何かを見ているような、その先には……。


「弟君、コレだよ!」

「――アロマキャンドル、ですか」


 こちらの思考を掻き消す声に現実に戻り。

 白石が迷いなく手に取った商品を見て小宮は感嘆の声を上げ。


「ほら、美咲ちゃんって結構頑張り屋さんでさ。副会長の件もそうだけど色々と頑張ってくれているからこの機会に少しでも疲れから癒されてくれればなぁと思って」


 目を細め、頑張り屋の後輩を思う白石先輩の顔を見て無意識に笑顔になっていた。


「アロマキャンドルはリラックス効果もあると聞くので今回にはもってこいですね」

「よくご存知で」

「テレビの受け入りですがね」

「ふふ、そう」


 香りが数種類あったので美咲に合いそうな香りと見た目、色を決めて購入。


「弟君は何をプレゼントするの?」


 ラッピングされた袋を持って会計口から出てきた白石に唐突に聞かれ、ちょうど決めかねていた商品を手にしながら顔を向ける。


「あぁ、これにしようかと」

「……シュシュと猫のアクセサリー?」


 小宮の手の中にある物を珍しそうに眺め。


 手の中にあった物は「水色のシュシュ」と「猫のキーホルダー」の二つ。


「本当はここに来るまで、何を贈るか全然決まっていなかったのですがせっかくなら同じお店で探したほうが早いと思って。あ、もちろん美咲が普段から愛用しているシュシュの代わりと以前猫カフェに行きたいと言っていたので猫が好きだと思いこれを選びました」


 どこか照れくさそうに笑い商品を見せた。


「おお。美咲ちゃんの好みも把握してるみたいだし、良い彼氏さんじゃない〜」

「……茶化さないでくださいよ」


 ニマニマとした顔つきの白石に頰をツンツンされ更に照れ、耐えられなくなりそのままレジへ。


「――本当にいい彼氏さんだと思うな」


 小宮の耳に届かない程度の声量でポツリと。


(それに、「好きな人」に貰えるプレゼントならなんでも嬉しいと思うよ)


 そんな言葉は内心だけに留めて。



「先輩お待たせしました」

「いいよいいよ。まだ時間も早いしこの後はどうする? 少し回ろっか?」

「僕も時間に区切りはないので先輩の行きたい場所ならどこでも着いていきます」

「お、言うね〜じゃあ、ランジェリー――」

「訂正します。できる範囲で着いていきます」


 二人楽しく会話を交わし、お店をひやかし、お昼時になり近くの洋食店でお昼を済まし、楽しいひと時を過ごした。


 

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