第6話 氷嬢様とテスト勉強
6月下旬、主税の高校は期末テストのテスト週間を迎えた。主税はとぼとぼと肩を落としていた。主税はテストの成績は下から数えた方が早く。万年赤点で一年の時もギリギリ留年回避したぐらい危ない成績である。
途方に暮れていた主税が帰っているとクレープの移動販売の車が止まっていた。それだけならスルーしてもよかったのだか、メニューの書いてある看板の前に帰っている途中の鈴女がいたのだ。どうやら何を買おうか迷っているようだ。
主税「そういえば氷堂さんは学年成績ずっと1位だったような……」
主税はあることをひらめいた。そこで看板の前にいる鈴女に声をかけた。
鈴女「鍛冶場さん。どうしてこちらに?」
主税「いや、それを言うなら氷堂さんも同じことが言えるぞ。」
鈴女「私は少し小腹がすいていたので何にしようか悩んでいたので。」
主税「そうか……あのさ、俺がお代出すから好きなの頼めよ。」
鈴女「え?」
主税「その代わりさ、ひとつ頼みを聞いてよ。」
鈴女「頼みですか?」
主税「俺に勉強教えてくれない?」
鈴女は首を傾げた。
鈴女「それだけでいいのですか?」
主税「そう、それだけ。」
鈴女「でもそれだけでクレープを奢るのは安すぎではないでしょうか。」
主税「いいんだよ。じゃあ俺から注文するぞ。」
鈴女「では私はフルーツ全盛り生クリームで」
主税「(げっ、これ一番高いやつ……)」
主税は心の声を殺し、自分の信玄餅味と一緒に注文した。商品を受け取ると鈴女にフルーツ全盛り生クリームのクレープを渡した。
主税「(うまっ!生クリームも甘さを抑えていて黒みつと相性がいい。)」
主税は自分の信玄餅味のクレープを美味しそうに食べていた。隣りの鈴女は顔色変えずに黙々と食べていた。
主税「氷堂さん。美味しい……よね?」
鈴女「はい、とっても。」
主税「もうちょっと美味しそうに食べることはできないか?」
鈴女「そうですね。」
鈴女は少し考え、無理に口角を上げた。口もとをプルプル震わせながら。
鈴女「お……おいしい。」
主税「分かった俺が悪かった。逆に無理矢理言わされた感じがヤバいからやめよう。」
主税は鈴女に無理に口角を上げさせるのをやめさせた。鈴女は主税の持っているクレープを見た。
鈴女「それは何味でしょうか?」
主税「これか?信玄餅味だよ。」
鈴女は物珍しそうな顔で信玄餅味のクレープを見ていた。
主税「いるか?まあ俺が口つけたやつだしさすがに・・・・・・」
鈴女は主税のクレープを一口食べた。しかも主税の口をつけたところに。
主税「え・・・・・・」
口についたクリームを手で取ってなめた後。主税のキョトンとした顔に気づいた。
鈴女「どうしたのですか?」
主税「いや、これよかったらあげる・・・・・・」
鈴女「でもそうしたら鍛冶場さんの分が。」
主税「お腹いっぱいだから。」
鈴女「なら、遠慮なく。」
鈴女はクレープを受け取ると黙々と食べていた。
食べ終わった後、いったんそれぞれ部屋に戻り、鈴女が主税の部屋にやってきた。しかし一つだけ違う点が
主税「あれ、氷堂さんメガネ?」
彼女は銀ふちのメガネをかけて現れた。
鈴女「普段、家ではメガネをかけているので。」
主税「俺初めて見たけど。」
鈴女「そういえば鍛冶場さんにはまだ見せていなかったですね。」
主税「(メガネ姿も奇麗だな。)」
こうして2人で勉強をすることに。主税は開始早々うなだれていた。
鈴女「分からないところでもありましたか?」
主税「全部わからん。」
鈴女「・・・・・・。」
鈴女は憐みの目で主税を見ていた。
主税「そんな目で見ないで・・・・・・(怖い・・・・・・)」
鈴女「分かりました。一から教えるしかないですね。」
鈴女は主税の隣に座って一から勉強を教え始めた。
主税「(ち・・・・・・ちか!いい匂い・・・・・・)」
しかし、その煩悩が問題の理解という快楽へと変わった。
主税「そうか、そういうやり方をすれば解ける。」
鈴女「つまり、この公式を使えば次の問題も解けるはずです。」
主税「なるほど・・・・・・じゃあ同じやり方で解いたら・・・・・・できた!」
主税はその後も数学の問題を解き続けた。
主税「氷堂さん教えるの上手いな。」
鈴女「教えるのも勉強の一環ですので。」
主税「俺には到底無理だな。でも、氷堂さんのおかげで今回のテスト頑張れるかも。今年こそは夏休み補修無し目指せるな。」
鈴女「補修ですか?」
主税「そうそう、夏休み5教科ぐらい補修があってさ。7月の夏休みはそれで全部潰れたんだよ。笑っちまうよな。」
鈴女「それで本当によろしいのですか・・・・・・」
鈴女の声がいつもより低く聞こえた。顔を見てみるといつもより険しい表情を浮かべている。
主税「ハハハ・・・・・・なんで怒ってんの?」
鈴女「そんな低い志でどうするのですか。学生の本分は勉強なのですよ。」
鈴女はノートの紙を一枚ちぎってペンケースの中から油性ペンを取り出し紙にペンを走らせた。
鈴女「目標を決めましょう。今回の目標は全教科60点以上を目指しましょう。」
主税はその点の高さに仰天していた。
主税「ムリムリムリムリ!俺そんな高得点取ったことないって!」
鈴女「この間のサッカーの時に鍛冶場さん言っていたじゃないですか。諦めなければ必ず結果が出ると。」
主税「そんなこと言ってないぞ!?」
鈴女「それでもここで諦めるのですか?」
主税「ぐっ・・・・・・確かにここで逃げるのは男が廃るもんだ!やってやらぁ!」
主税は再び問題に臨んだ。かなり集中してご飯を作ることも忘れて。
主税「今何時だ・・・・・・深夜!?悪い氷堂さん・・・・・・」
しかし鈴女の姿がいない。机の上にはカップラーメンと置き手紙とノートが置いてあった。手紙には「このノートに練習問題を書いておきました。勉強頑張ってください。」と書いてある。
主税「あんがと。でも深夜のカップ麺は・・・・・・体によくねえだろ・・・・・・」
と言いつつお湯の準備をしていた主税であった。
そしてテスト当日。教室にやってきた主税は目にくまができていた。
駿介「お前!なんだその顔は?」
主税「ねみ・・・・・・」
駿介「まさか勉強していたのか?成績万年下位のお前が?」
主税「眠いから突っ込む気にもなれねえ・・・・・・」
そしてテストが始まった。最初の現代文のテストでは・・・・・・
?「グ~グ~」
いびきをかいて寝ている人がいた。
駿介「(おい・・・・・・テスト中に寝るなよ。)」
どうやら主税が力尽きて眠っていたのである(ダジャレじゃな・・・・・・これ泥んこ運動会のときも同じこと言ってたな・・・・・・)
先生「おい鍛冶場。テスト中に寝てるやつがあるか。」
ゆすって起こしたが全然反応しなかったため先生は諦めた。テスト開始から30分後、主税は目を覚ました。
主税「(げっ!テスト中に寝ちまった!)」
鈴女「・・・・・・・・・・・・。」
主税は急いで問題を解いたものの問題は3分の2ぐらいしか書けなかった。その後のテストは何とか解けたものの一番自信のある現代文で取れなかったショックは大きかった。この日は午前で学校が終わって主税は家に帰った。帰ってくるなり椅子にぺったり座り込んだ。
主税「終わった・・・・・・せっかく勉強したのにテスト本番中に寝るとは・・・・・・」
主税は悔し涙を流していた。せっかく勉強を教えてくれた鈴女に申し訳ないという気持ちがあった。
鈴女「その気持ちがあるのなら泣いてる暇はないのでは?」
主税「わ~!!なんで氷堂さんが俺んちに!?」
鈴女「ドアが少し開いていたので。」
主税は涙を拭った。
主税「わりぃ、せっかく教えてくれたのに・・・・・・棒に振っちまって。」
鈴女「謝っている暇があるのなら明日の勉強の準備をしましょう。私もやりますので。」
主税「天才ってすげえな。そこまでやるなん・・・・・・」
鈴女「それ、本気で言ってます?」
主税「え?」
鈴女はいつになく怖い表情をしていた。
鈴女「私は、天才でも何でもありません。その一言で片づけるのは一番嫌いです。」
主税「悪い・・・・・・酷いこと言った。」
鈴女「でも、メンタル面が崩れているのはしょうがないので今回は不問にします。」
主税「ありがと。」
鈴女「では、さっそく勉強始めましょう。」
次の日からのテストは主税も気合を入れなおし、テスト期間を乗り越えた。テストの返却日・・・・・・主税は返してもらった答案用紙を家で出した。
鈴女「現代文以外は60点以上達成しましたね。」
主税「ぐっ・・・・・・やっぱり目標達成できなかった。」
鈴女は主税の頭を優しくなでた。主税は突然の行為に言葉に詰まった。
主税「なっ!えっ!はっ!?氷堂さん。」
鈴女「よくできました。現代文はしょうがないとしてよく頑張りました。結果が報われましたね。」
主税は鈴女を見ると優しく微笑んでいた。
主税「それだよそれ!!」
鈴女「はい?」
主税「今の顔!その顔ができればきっと学校にも馴染めるぞ!」
鈴女はもう一度同じ顔をしようとすると口元がプルプル震えていた。
主税「意識するとダメなんだな・・・・・・」
主税は56点の現代文テストを折りたたんだ。
第6話(完)
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